iemiru コラム vol.126
仕組みは?お手入れ方法は?24時間換気システムについての疑問を徹底解説!
24時間換気システムってなに?
義務化の背景にシックハウス症候群?
その名が示す通り、機械制御により24時間換気(給排気)を行い、いつでも家内の空気をきれいに保つシステムです。近年は、建築技術の進歩により「エコ住宅」と呼ばれる高気密高断熱住宅が主流になっています。しかし、住宅部材に含まれるホルムアルデヒドなどの化学物質も居室内にこもりやすくなり、シックハウス症候群やアレルギー被害の原因にもなってしまいます。そこで平成15年に法改正がされ、住宅を新築する時には、24時間換気システムを設置することが義務付けられました。現代の住宅事情をふまえた必要不可欠な設備と言えます。
疑問!24時間ずっと稼働し続けなければいけないの?
しかし24時間ずっと換気システムを稼働させ続けなくてはならないのでしょうか?結論から言えば「絶対に24時間稼働させ続けなければならない」というものではありません。日中は窓を開けて換気しているのであれば必要ありません。スイッチを切れば換気機能はストップします。ただ、24時間換気システムは湿気を取り除く効果が高いので、 まったく使用しないのではなく、1日の中でONとOFFを使い分ければよいでしょう。 今回は24時間換気システムについて詳しくご説明します。
24時間換気システムの仕組みと効果は?
吸気と排気で家内の空気を入れ換え
24時間換気システムでは、吸気と排気で家内の空気を入れ換えます。方式にもよりますが、各部屋に換気扇を設置するのではなく、壁や天井にあらかじめ設置された給気口からきれいな空気を取り込み、きれいな空気は各部屋のドア下の隙間から廊下へ流れ、最後は洗面所やトイレ、バスルーム等に設けてある吸気口から外部に排気されます。これを24時間機械制御で行うシステムのことです。 換気をするだけであれば、換気扇などの電動機械を使わず、窓の開閉による自然換気でも十分ではないかと思われるかもしれません。昔の住宅は家自体の気密性が低く(家のあちこちに隙間がある)、それこそ窓を開ければ、さらには換気扇がなくても、家外で風が吹けば家の隙間から換気ができていました。ただし、浴室、キッチン、トイレなどの水回り周辺は湿気や臭気の関係から換気扇が設置されています。 自然換気のメリットは、換気扇などの機械を使わないので電気代が不要であり、ランニングコストを安く抑えることができます。気候がいい時期には「気持ち良い風」が入ってきますので、気分も良くなります。一方デメリットとして、換気量は気象条件により大きく影響を受けてしまい、換気量や場所をコントロールすることができないことです。その名の通り「風まかせ」になってしまい、安定的な家内空気の入れ替えが困難となり、シックハウス症候群等への対策にも不向きとなっています。
湿気をコントロールしてカビや結露を抑制
24時間換気システムのメリットは、自然換気のメリットとデメリットを入れ替えると分かりやすいでしょう。さらに安定的な家内空気の入れ替えに着目すると、最初にも触れましたが、湿気対策に大きく貢献します。 24時間換気システムがない家の場合には、どうしても空気の流れが弱い箇所が出てきます。そういった場所は湿気も溜まりやすく、結露やカビの発生原因になります。カビは結露によりできる壁などの水滴、およびそれによりできた汚れが栄養素になって増殖していきます。24時間換気システムは、室温を均一化し余分な水蒸気を排出することで結露の発生を防ぎ、その結果カビの防止に大きく貢献するのです。 ただし、梅雨の時期など家外の湿度が高い場合には、家内の水蒸気を輩出しても家外の湿気が入って来ます。また夏季は冷房を使用しますので、こまめな調整で結露防止をするようにしましょう。
フィルターの活用で汚染物質をシャットダウン
さらに24時間換気システムでは、給気口にフィルターを設置し活用することで外気に漂う汚染物質や花粉をシャットアウトすることができます。近年は大陸から飛散する黄砂やPM2.5(超微粒子)など、大気汚染は日々深刻化しています。窓の開閉による自然換気のような「単に外気を取り込む」だけでは、それらの物質はそのまま家内に侵入してきます。また花粉症の方の場合では、その時期に窓を開けたくてもできないのが実状です。この場合でも、換気システムの吸気口に花粉を吸着し、室内への侵入を防ぐフィルターをこまめに洗ったり交換したりすることで、家内に花粉の侵入を防ぐことができます。
24時間換気システムの3つ種類と特徴
24時間換気システムには「第1種~第3種」の3方式があり、それぞれメリットデメリットがあります。ここではそれぞれの特徴や、どんな場合にどの方式を採用すればいいのかについて説明していきます。
第1種換気方式 【ファンで給気 ・ ファンで排気】
この方式は吸排気ともに機械を利用します。吸気口をダクトで各部屋に引きこみ、そこから廊下など各部屋に設けた排気口に空気が流れ込むようになっており、最も空気の循環が確実に行われる方式です。また、熱交換換気システムを利用することで、家内の温かい空気を排気し、家外の冷たい空気を室内の温度に近づけてから給気することができますので、家内の温度を一定に保つことができます。湿度についても、効率が良い方法となっています。 一方デメリットとしては、吸排気両方に換気扇が必要となり、他の方式と比較して設置費用、ダクト内に蓄積されたほこりの清掃や、フィルター交換費用がかかる点です。第1種換気方式を採用する場合には、予算や費用対効果の他にメンテナンスについても考えておく必要があるでしょう。
第2種換気方式 【ファンで給気 ・ 自然に排気】
この方式は、吸気は機械換気を用い、排気は排気口から自然換気を行う方式です。外気の取り入れにより家内の気圧が上がります。そして家外との気圧差から自然と外へ空気の流れが生じます。メリットとしては、機械を用いるのが吸気のみになるため第1種方式と比較して費用を安く抑えることができます。また、常に正圧状態(家外の気圧より家内の気圧が高く、家内の空気が常に外に出ていこうとしている状態)が保てます。
一方デメリットとしては、家内の空気がスムーズに外に流れないと、空気中の水分が壁の中に侵入し内部結露が起きる可能性があります。家外の空気如何により家内の温湿度環境が大きく影響されてしまうため、この換気方法を採用している住宅はほぼないのが現状です。
第3種換気方式 【自然に吸気 ・ ファンで排気】
この方式は第2種換気方式とは真逆の方式です。吸気は自然換気を用い、排気は機械換気を用います。建物に自然吸気口と、排気用の換気扇(1~2ヶ所)を設置して排気を行います。常に家外に空気が排出されているため、足りなくなった空気が自然給気口を通じて家内に入り込んできます。そのため、家内が常に負圧状態(家内の気圧より家外の気圧が高く、家外の空気が常に家内に入ろうとしている状態)になります。 メリットとしては、機械を用いるのが排気のみになるため、第1種方式と比較して費用を安く抑えることができます。また、排気を機械で行うため、第2種方式の欠点であった内部結露の発生を抑えることができます。 一方デメリットとしては、家内の空気をある意味強制的に排出し、家外の空気を取り込む仕組みであるため外気温の影響を受けやすくなります。また気密性が低い住宅の場合は、天井や壁、床などの隙間から空気が流れ込んでくるため、空気の循環がスムーズに行われないことが挙げられます。すべての部屋に給気口が必要であり、給気口の設置場所によって家具の配置を考えなくてはならないこともあります。 この第3種換気方式は、24時間換気が義務付けられた現在、最も採用されている換気方式です。
購入・設置費用、ランニングコストの違いは?
① 第1種換気方式 【購入・設置費用:高い ランニングコスト:高い】
吸気・排気を全て機械で行い、また各部屋の天井裏にダクトを通す必要があるため、どうしても初期費用が高くならざるを得ません。ランニングコストも24時間機械を稼働させなくてはならず、後で説明しますが、熱交換システムも稼働させるため電気代も高くなってきます。特に、換気扇を多数稼働させるため換気の電気代だけで月千円以上かかるケースが多いです。さらにダクトのホコリ清掃やフィルターの交換など定期的なメンテナンスが必要になります。
② 第3種換気方式 【購入・設置費用:安い ランニングコスト:安い】
排気のみ換気扇を使用するシステムであり、各部屋にダクトを通す必要はなくシンプルで低コストです。また電気代などのランニングコストも、最近の設備はDCモーターを採用するなどの技術進歩により、運転の強弱の程度にもよりますが月100~200円程度です。
第3種換気方式は家の空気を排出させる方式のため、気密性が高い住宅でないと期待効果が低くなってしまいます。
以上をまとめると、初期費用、ランニングコストを抑制したいということであれば第3種換気方式を、お金に余裕があれば第1種換気方式を選択するとよいでしょう。また、空気清浄機能を重視するのであれば、やはり第1種換気方式に軍配が上がります。大きな道路に面するなど空気汚染が心配な環境下や、アレルギーが心配であれば第1種換気方式が優れています。ただし、前提条件として定期的なメンテナンスを行うこと、代替措置として空気清浄機の購入することがあり、費用対効果の面では、決して第3種換気方式が劣るというものでもありません。ここは個人の考え方にも影響される部分ですので、住宅購入時には家族でよく話し合ってから決定するのがよいでしょう。
もっと教えて!24時間換気システムについて気になること
稼働音はうるさくないの?
24時間換気システムはその名が示す通り24時間稼働しています。やはり気になるのはその稼働音でしょう。稼働音がうるさいと快適性がそがれてしまいます。結論から言うと、個人差はあるもの、一般的には気にならない程度の稼働音です。もし、異常な音がする場合は機械そのものの異常が疑われますし、設置当初と比較して稼働音が大きくなったと感じられるようであれば、フィルターの目詰まりなどメンテナンス不足による稼働音の増加が考えられます。
また、経年使用によるモーター劣化によるモーター音の増大という可能性もあります。稼働音が気になるようでしたら、まずはフィルター交換などセルフメンテナンスを行い、それでも解消しないようであれば住宅会社等のお客様センター等へ連絡し、点検を依頼してください。
熱交換ってなに?
第3種換気方式を採用している人から「冬場は寒い」と耳にすることがあります。原因は家外の冷えた空気をそのまま取り込み、暖かい家内の空気を排出するからです。夏はこの逆のことが起きます。一方、第1種換気方式は熱交換を行いますので、そのようなことは起きません。
熱交換の仕組みは「冷えた体をお風呂(湯)で暖める」というイメージが分かりやすいでしょう。冷たいものと熱いものを混ぜるといつか同じ温度になりますが、それが熱交換です。第1種換気方式では冷たい家外の空気を、熱交換機器を通して室内温度に近づけて、つまり熱交換を行ってから各部屋に給気するため、家内の温度を下げずに換気することができるのです。夏場はこの逆です。家内の温度が一定に保たれるため、冷暖房費などの光熱費の省エネにつながります。
花粉症対策にも効果があるの?
常時窓を開けて換気することができればいいのですが、花粉症の時期に窓を開けることは、花粉が家内に入ってくるため、花粉症の人にはできない相談です。
その点24時間換気システムでは、第1種、第3種換気方式とも給気口にフィルターを設置することで、花粉の侵入を防ぐことができます。一言でフィルターと言っても様々な種類があり性能差もあります。高性能のフィルターになると花粉だけでなくPM2.5のような微小粒子状物質にも対応しています。高性能フィルターになると値段も高くなりますし、また定期的なメンテナンスを行わないとフィルターの性能が落ちます。「小さな子供がいるからPM2.5の侵入は防ぎたい」など、家族構成や目的に合わせて選択するようにしましょう。
24時間換気システムのお手入れ方法は?
第1種、第3種とも共通しているのは「フィルターの清掃・交換」です。フィルター交換は、各家庭の自然環境、使用状況により異なりますが、目安として概ね3ヶ月に1回の点検、1年に1回はフィルター交換をするようにしましょう。
3ヶ月毎の点検時は、フィルターに付着した汚れやホコリを、掃除機等を使いながら目詰りの有無をチェックします。汚れがひどい場合は、中性洗剤を使用して洗えば再利用することもできますが、カビの発生を防止するため、十分に乾燥を行って水分を完全に除去した状態で設置します。
なお第1種換気方式の場合は、ダクトの汚れがひどい場合の清掃や、熱交換器のエレメント交換も10年に一度程度の間隔で行う必要があります。第3種換気方式の場合は、排気口内の換気扇部分にホコリが付着していますので、3ヶ月毎の点検時にあわせて清掃をしましょう。
家内の空気を浄化してくれる24時間換気システム
実は汚い室内の空気
家内の空気中には、体に悪影響を与える物質が漂っており、実はかなり汚れています。例えばシックハウス症候群を引き起こす原因となる「ホルムアルデヒド」や、アレルギーやアトピー性皮膚炎等の原因物質であるダニやその死骸、カビなどのハウスダストが挙げられます。しかし、窓を開けて換気をすると花粉やPM2.5を室内に取り込むことになるため、時期によってはそれもできません。高気密高断熱住宅の普及により、いわゆる「すきま風」による換気もできないため、汚い空気が排出されずに家内にとどまっています。
そこで24時間換気システムを活用して、綺麗な外気を取り込んで快適な住空間を作ることが必要になります。雨の日や風が強い日、花粉症の時期に窓を開けて換気することは困難です。それ以外にも、例えば家の前が交通量の多い道路の場合には、排気ガスや粉じんによる空気汚染も心配であり、そのような空気を家内に取り込むことには抵抗がある方も多いでしょう。
綺麗な外気を取り込んで快適な住空間を
24時間換気システムは、冒頭にも記載しましたが、必ずしも24時間稼働させ続けなくてならないものではありません。稼働させれば当然電気代もかかってきます。そのため外気の状態によってONとOFFをうまく使い分けることが重要です。窓を開けて換気ができる時にはOFFにするのも良いでしょう。フィルター清掃や交換をする際にはシステムをOFFにしないといけませんので、そのタイミングで清掃や交換作業を行うこともできます。PM2.5対策という意味でもフィルター活用で効果的に換気が行えます。
居住の快適性に影響を与える「温熱環境」ですが、24時間換気システムを効果的に活用して家内の空気を浄化することできます。複数の方式を比較しながら、自分の家族に必要な設備を選ぶようにしましょう。
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