iemiru コラム vol.155
勾配天井ってオシャレだけど手間が大変!?気になる魅力と注意点とは?
勾配天井とは?
家づくりにおいて、「勾配天井」という言葉を聞いたことはありますか?勾配天井は近年増えている天井のかたちで、開放感や明るさをもたらす設計として比較的若い世代に人気です。今回はそんな勾配天井について解説します。当然ですが、天井のかたちは完成後に変えることはできません。ですから間取りや素材と同様、しっかり情報を集めて検討していただきたいと思います。
天井が斜めに勾配になっている天井のことを指す
勾配天井とは、天井となる面に傾斜がつき、斜めになっているものをいいます。いわゆる三角屋根と呼ばれる切妻屋根の住宅なら、中心の棟木(屋根の骨組みの一番高い部分)から左右に下がる形になります。一方向だけに下がっている片流れ屋根の場合は、屋根の形と同様、天井の一辺が高く、もう一辺が低く傾斜しています。 勾配天井は、ルーフバルコニーがあるような陸屋根(平屋根)の住宅ではあまり用いられることはありません。反対に、住宅密集地などで周囲への日照を確保するための斜線規制が定められている地域では、比較的傾斜の大きい片流れ屋根が採用されることが多く、屋根の形状に沿って内部も勾配屋根にすることが多いです。
屋根裏としてのデットスペースを、部屋の空間として使っている
多くの場合、勾配天井がある家では、屋根裏にあたる空間を部屋の一部としています。屋根裏部分に床を施工すれば収納として使うこともできますが、使わない場合はデッドスペースとなってしまいます。それなら部屋の空間の一部としたほうが無駄がないので、勾配天井を採用するケースが増えているのです。
勾配天井の魅力となるポイントとは?
それでは、勾配天井にするとどのようなメリットがあるのでしょうか。部屋全体に関わる設計なので、全体に与える影響は相当大きくなります。見た目だけでなく住み心地にも関わる部分ですから、しっかりチェックしましょう。
部屋に開放感が生まれる
日本の住宅では、部屋の床から天井までの高さは2400mmというのが一般的です。これを勾配天井にすると、角度にもよりますが最も高い地点を5000mm(=5m)という設計にもできます。通常の2倍以上高くなりますので、まるで山小屋やホテルのエントランスのように開放的に感じられます。 住まい全体を勾配天井にしなくても、家族が集まるリビングのみを吹き抜けの勾配天井にしたり、寝室や子ども部屋など一部に採用するケースもあります。
部屋を明るくできる
勾配天井にすると、部屋の上部が吹き抜けのようになり、高い位置に採光用の窓を設けることができます。夏と冬では日射角が異なるため、通常の高さの窓だと季節と時間によって日の入り方にばらつきがでてしまいますが、高窓なら一年中、自然光を取り入れることが可能です。このため、日差しが部屋の奥まで届くようになり、全体的に部屋を明るくすることができます。実際、勾配天井の住まいでは晴れた日なら日中は照明がいらないほどです。 1階部分のみの平屋で周囲に建物が建っている場合、どうしても日射がさえぎられて採光が難しくなることがあるでしょう。平屋なので建物自体の高さはありませんが、天井を勾配天井にして高窓を設ければ、より多くの日差しを室内に取り込むことができます。
視線を気にしなくて良い
室内から外を見た場合、高い位置に窓があると窓から空が見えることになります。天窓を設けなくてもいつでも空を見上げられるというのも、勾配天井と高窓の魅力です。「日中は青空を、夜は星空や月を見上げながらリビングで寛ぐ暮らし」なんて、素敵ですよね。 また、一般的に窓が多ければ多いほど光と風を取り込みやすいですが、同時に外からの視線も中に入れてしまいます。家の中の様子が外から丸見えというのは、プライバシーや防犯の観点から避けたいですよね。小さなお子さんがいればなおさらです。 その点、勾配天井にして高窓を設ければ、人が行き来する道路と高さの違いが生まれるため、視線はさえぎり、光と風だけを室内に招くことができます。何気なく外を見た瞬間に通行人と偶然目が合ってしまう、ということもありません。
通気が良くなる
勾配天井のメリットは他にもあります。通常、暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へと流れます。たとえば高窓と腰窓を開けていれば、室内の暖かい空気が天井付近に集まって高窓から外へ抜け、同時に腰窓から新鮮な空気が入ってくることになります。つまり、部屋の中の空気が常に動くので、自然と住まい全体の通気が良くなるといえるでしょう。 可能であれば、建築前に担当設計士と現地を調査し、風の流れを把握しておくと、設計時に反映ができ、より通風の効率があがります。もともと住んでいる場所で建て替えを行うなら、既存の窓を開け閉めして風の通り道を確認しましょう。
梁がアクセントになる
一般的な木造住宅では、柱と梁で構造を組み、その上に仕切り壁を設けてつくります。その中でも梁は本来、天井の内側に隠れていて内側には見えない構造材です。しかし現在では、化粧梁といってわざと室内に梁のような部材を設け、意匠性を高めるデザインも増えています。古い日本家屋の小屋組などは、眺めていて迫力がありますよね。 勾配天井にすれば、化粧梁を設けずとも、吹き抜け部分に梁を見せることが可能です。水平にわたる梁が室内に見えていると、木材の質感が増して温かみを感じられますし、空間のアクセントとしても存在感を放ちます。見上げたときにどっしりとした梁が見えていると、なんとなく安心するものです。
勾配天井の注意点とは?
いいこと尽くしの勾配天井ですが、一方で注意するべき点もあります。ハウスメーカーからすすめられることもありますが、設計時によく考えないと、住みはじめてから後悔することも。モデルハウスを見学しただけではわからない、勾配天井の注意点を挙げますので、何を重視して家づくりをするか、プランニングの中でじっくり考えてください。
メンテナンスが手間
前述の通り、勾配天井は一般的な住宅に比べて高いので、その分照明を取り付ける位置も高くなります。その結果、照明の電球交換のときにひと手間がかかります。通常の天井であればパパが交換できる電球も、勾配天井だと手が届きませんので、踏み台や脚立を持ってきて、交換して…ということが起きえるでしょう。 工夫して家族で交換ができればまだよいですが、天井高が5mにもなると、さすがに踏み台や脚立を使っても届かないでしょう。その場合は家を建築した工務店やハウスメーカーに依頼して、電球を交換してもらわなければなりません。担当者に即日来てもらえればよいですが、そうでない場合は照明がつかず数日…ということも。小さなことのように思えますが、意外と重要です。
コストが掛かる
勾配天井にすると、屋根裏の床を施工しないことで多少はコスト削減につながるかもしれませんが、その分、壁の面積が増えることになります。壁面はクロスを張ったり漆喰仕上げにしたりと内装の工程がかかるので、壁面が増えると工事の作業効率としては下がります。その結果、工期が長くなり、かかった人件費の分だけ施工価格に反映されてしまうのです。 特に、リビングなど広い部屋を勾配天井にすると、その分施工面積が増えることになります。勾配天井に決める前に、できあがりのイメージだけでなく、プラスされるコストもしっかり考慮しなければなりません。
家の性能が問われる
勾配天井にすると部屋の容積が増えます。部屋の容積が増えるということは、建物の機密性や断熱性が問われるということでもあります。たとえば、四畳半の部屋を冷房で冷やすのと、体育館を冷やすのでは、かかる時間がまったく違いますよね。同じ考え方で、広さが同じでも高さが増すと、冷暖房の効率は残念ながら下がってしまいます。 ですので、そんなときはシーリングファンを導入しましょう。空気は温度によって移動します。暖かい空気は上に集まるので、室内の空気をかき回すシーリングファンを天井に取り付けることで、天井付近に集まった空気を移動させることができます。このように、冷暖房で冷やしたり暖めた空気を部屋中に循環させることで、快適な室温を保つことができます。
通常とは異なる勾配天井の照明計画とは?
勾配天井を採用する場合、照明計画も非常に大切になってきます。天井が高い分、床との距離が開くので反射率が変わりますし、取りつける天井面が斜めになっているので光のあたる角度も変わります。天井の形状に合わせて、安全に使うことができ、かつ部屋の雰囲気に調和するものを選びましょう。
シーリングライト
天井面にぴったりと張り付くようなかたちのシーリングライトは、勾配天井には不向きといえます。一般的なシーリングライトは水平な天井に取り付ける想定で設計されているので、無理やり勾配天井に取り付けると落下の可能性があります。どうしても使いたい場合は、勾配天井専用のシーリングライトも販売されていますのでそちらを選んでください。 また、天井が斜めになっている分、部屋を真上から照らせるわけではないので、明かりを部屋全体に届けにくいという点もあります。明るい部屋にしたいという場合は、シーリングライトは避けた方が無難でしょう。
ペンダントライト
天井から吊り下げるペンダントライトは、照射角度が床と平行になるため、勾配天井でも比較的取り入れやすい照明です。デザインも豊富でおしゃれなものが多いので、見た目を重視する方にもおすすめです。ただし、棒状の器具を傾斜がついている天井に斜めに取り付けるのは危険なので、垂直にコードを垂らす構造のものを選んでください。 また、ペンダントライトは重量があるものが多いので、大きな地震の際には落下して割れてしまう可能性もあります。床に落下しても割れにくい素材のものがよいでしょう。
ダウンライト
勾配天井にダウンライトを取り付ける場合、床に向けて光が当たるよう調整する必要があります。ですので、取り付け面に対して固定されるものではなく、角度を自在に変えられるものにしましょう。角度を調整して間接照明のように壁面を照らすとおしゃれな雰囲気に仕上がります。梁が室内に出ている場合、梁に器具を取りつけるのもおすすめです。 また、勾配天井にダウンライトを取りつけた場合、電球が切れたときの交換も高い位置に上って行わなければなりません。家庭にある踏み台や脚立に上って手が届く位置かどうか、確認する必要があります。勾配天井の一番高い位置にダウンライトがある場合、自分たちで電球の交換ができない可能性があります。
勾配天井の良し悪し
勾配天井が適しているかどうかは、家づくりを行う際に何を重視するかによります。勾配天井には見た目も機能面にも優れた点がたくさんありますが、設計次第では使い勝手が悪いと感じてしまう側面もあります。ここでもう一度、勾配天井のメリットとデメリットを振り返ってみましょう。
部屋に開放感が生まれ、プライバシーも保つことができる
部屋が縦に広くなるので、視覚的な開放感が生まれ、より寛げるというのが最大のメリットです。同時に窓の位置を高く設計できるため、外部からの視線を自然に遮り、家族のプライバシーを守ることができます。空気を循環させられるのも、勾配天井と高窓のポイントです。
メンテナンスやコスト面に問題あり
モデルハウスや完成宅の見学ではわかりにくいですが、取りつけた照明の電球交換など、住みはじめてからのメンテナンスの面で「使いにくい」と感じることがあるかもしれません。また、勾配天井はコストアップにつながるため、建築コストを少しでも抑えたいという場合には避けた方がよいといえます。
自分に合った照明計画を立てて、快適ライフを手に入れよう
勾配天井の住まいで快適に暮らせるかどうかは、綿密な照明計画にかかっています。暮らしはじめてからも不具合を感じることなく、開放感や安心感をもって過ごせるよう、設計の工夫を凝らしたいですね。勾配天井にするかどうか迷っている方は、まず「こんな暮らしがしたい」というイメージを設計担当者に伝え、勾配天井が自分たちに適しているかどうか、考えてみてください。
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