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iemiru コラム vol.288

二世帯住宅のメリット・デメリットは? 間取りや税金・補助金について分かりやすく解説

親と同居する「二世帯住宅」は、隠れたトレンドとして近年増加している住宅スタイルです。嫁と姑の関係が悪化するイメージもありますが、それは昔のこと。現在の親世代はプライベートを尊重する独立志向の方も多くいらっしゃいます。 また二世帯住宅は、子育てや介護で助け合えるだけでなく、金銭面でのメリットも。本記事ではメリット・デメリットにくわえて税金や補助金、うまくいくための間取りについて分かりやすく解説していきます。

「二世帯住宅」は東日本大震災を契機に増えている?

2000年代中盤まで減っていた二世帯住宅が、近年は首都圏をはじめとした都市部で増加しています。大きな原因として「2011年の東日本大震災以降、家族のつながりが強くなっている」という意見もありますが、実際にはどうなのでしょうか? 他の原因としては「1970年代の高度成長期にできた戸建が建て替え時期を迎えている」・「共働き世帯の増加に伴い親世帯のサポートが必要になっている」・「親世帯の高齢化による介護サポートが必要になっている」といったことが考えられます。 また二世帯住宅ではお互いによる世帯サポートだけでなく、税金や補助金による建て替えの負担軽減も行われています。ここからは、メリット・デメリットを詳しく確認していきましょう。

二世帯住宅にする3つのメリット

二世帯住宅にするメリットは、大きく以下の3つに分かれます。

メリット① 親が孫の子育てをサポート

共働き世帯は仕事をしながら子どもの送り迎えから夕飯の準備などをしなければならず、かなり子育ての負担が大きいのが現状。そんなとき、二世帯住宅であれば親世帯のサポートを受けながら、家族全員で子育てできるのは大きなメリットです。 「孫の成長を間近でみられる」と喜びつつ、生活に張りがでると歓迎してくれる親世帯も多くいらっしゃいます。子供(孫)にとっても、おじいちゃん・おばあちゃんと触れ合うことでコミュニケーションの幅が広がり、見守ってくれる人が増えるので安心です。

メリット② お互いの生活をカバーしあえる

二世帯住宅では、旅行中の戸締りや郵便・宅配便の受け取りなど、お互いの生活を助け合える環境も魅力です。また力仕事と庭仕事の分担など、お互いの得意分野を活かすことで、体力的にも精神的にも負担を減らすことができます。

メリット③ 税金・補助金で経済的負担が軽く

二世帯住宅では「相続税の軽減」や「建築・リフォームの補助金」といった制度上での優遇を受けることができます。詳しくは後述しますが、長期的に数十万~数百万円レベルでお得な恩恵を受けられるのも魅力です。

二世帯住宅にする2つのデメリット

二世帯住宅のメリットを前述しましたが、全ての方にとって良いことばかりあるわけではありません。以下のようなデメリットもあるので、ご家族のライフスタイルや世帯収入と照らし合わせながら、良いスタイルを探してみてください。

デメリット① 生活習慣の違いによるストレス

もっとも大きなデメリットは、生活習慣の違いによるストレスが起きやすいこと。例えば夫の親と同居することになる場合、夫にとっては実父・実母なのでストレスは少ないでしょうが、新しく関係を築く妻の負担はかなり大きいものです。 とくに食べもの好き嫌いや生活リズムの違いなど細かいことでも、積み重なることで、大きな精神的ストレスになってしまう可能性もあります。 同居する前には必ず、お互いの生活習慣などについて話し合い、必要であればルールを作るなど、お互いが疑問を持つことなく生活できる工夫が大切です。

デメリット② ローン返済や売却時のトラブル

二世帯住宅を新築したりリフォームしたりする場合、その費用負担を親世帯と子世帯で分けることもできます。しかし、万が一どちらかが病気になったり、仕事ができなくなったりした場合は、もう片方の負担が一気に増加してしまうかもしれません。 また、転勤などの事情でどちらかの世帯が引っ越しすることになった場合、もう一方の世帯は残ることになるでしょう。そうなると、本来なら売却すれば良いだけのことでも、二の足を踏むことになりかねません。 支払いが楽になるようなメリットばかりに目を向けず、万が一に備えたプラン作りが大切です。

ライフスタイルや資金によって変わる3つの「間取り」

二世帯住宅の間取りは、ライフスタイルや資金によって大きく3種類にわけることができます。それぞれの特徴を理解して、自分たち家族にあった間取りを選ぶようにしましょう。

間取り① お互いのプライベートを尊重する「完全分離スタイル」

「完全分離スタイル」は、玄関やキッチンなどすべて個別に用意する間取りのこと。意図的に会わなければ、1週間以上顔を合わせない可能性もあるので、マンションのお隣さんのようなイメージになります。 生活リズムや趣味が違う世帯同士であれば、十分にお互いのプライバシーを守りつつ、気配を感じながら安心して暮らすことができる距離感です。分離する方法は、2階建の上下で住み分けたり、単純に敷地の左右で住み分けたりします。 キッチンやお風呂など、あらゆるものが2つ必要なので、その分の建築費用や広い土地が必要です。費用総額は、3種類の間取りのなかで一番高額になります。ただし、税金や補助金の優遇はあるので、ハウスメーカーと相談しながら有効活用しましょう。 プライバシーを尊重しつつ、お互いを見守りながら生活したい方におすすめのスタイルです。

間取り② 共同スペースでコミュニケーションの多い「部分共有スタイル」

「部分共有スタイル」は、玄関やお風呂など、家の一部分を共有する間取りこと。キッチンやリビングを個別に分けることで、毎日顔を合わせつつもプライバシーを保てるのが特徴です。親世帯の子育てサポートもスムーズにできます。 極端に早朝・深夜の出入りがある場合は、睡眠などに影響する恐れがありますが、一般的な世帯であれば多少生活リズムが違ってもストレスは少なめです。 家の設備を共有するので、完全分離スタイルよりも建築費用が安く、土地の広さも必要ありません。費用総額は3種類のなかでも平均的になります。もちろん税金や補助金などの制度を利用可能です。

間取り③ 協力関係を築きやすい「完全同居スタイル」

「完全同居スタイル」は、それぞれの寝室以外は全て共有する間取りのこと。ひとつの大家族として暮らすので、プライバシー要素は少なく、より密接な関係となるのが特徴です。子育てもサポートしやすく、より安心して暮らせます。 完全同居では毎日、家の中でお互いが関わるため、生活リズムや食事の好き嫌いなど、習慣やフィーリングの相性がとても大切です。相性がよければ生活が豊かになりますが、そうでない場合、ストレスが溜まりやすいスタイルと言えるでしょう。 すべての設備を共有するので、建築費用がもっとも安く、土地の広さも最小限で大丈夫です。費用総額は一番少額で済みます。

二世帯住宅でトラブルになりやすいポイント

トラブル① 夜中のトイレや話し声といった「生活音」

マンションなどの集合住宅でもありがちですが、二世帯住宅でもトラブルの種になる「生活音」。夜中にトイレを流す音や、テレビ音など、気になりだしたら止まりません。 親世帯が朝早くから活動したり、子世帯が夜遅くに仕事から帰宅したりするなど、生活リズムの違いが大きく影響します。 また意外にも話し声が気になる方も多いようです。とくに吹き抜けを採用している家では、下でしゃべっている内容が上に丸聞こえで、聞く方も聞かれる方もストレスを抱えてしまいます。 建築・リフォームするときには必ず空間を分けて間取りを決め、場合によっては防音対策も併せて検討してみましょう。

トラブル② お互いに「来客者を招きづらい」

住み始めてから初めて感じる方も多いのが、来客を招きづらいという問題です。とくにリビング・ダイニングを共有している二世帯住宅では、同居人が気になって友達も呼べないという方もいらっしゃいます。 他人を家に呼びたくない方にとっては良い口実になりますが、多くの場合、マイナスになりがちなポイントなので注意しましょう。 自由に使えるフリースペース・ゲストスペースを設けておくと、急な来客にも対応できて便利でしょう。

トラブル③ キッチン共有は「食事のルール」が大変

キッチンを共有している二世帯住宅では、食事の好みも大きな問題です。一般的に、食事は1日3回もある重要な生活の一部ですから、お互いにストレスをためやすくなります。 特に、味付けや好き嫌いに対する注文は大きなストレス要因です。 よほど料理が好きか腕に自信がある方や、本当に好き嫌いなくなんでも食べられる方でなければ、あらかじめキッチンを別にすることを視野に入れて相談してみましょう。

トラブル④ 「過干渉」と「甘え過ぎ」に注意

子育てや介護をサポートしている二世帯住宅では、お互いへの「過干渉」と「甘え過ぎ」に注意が必要です。過干渉では、料理中に何を作っているのかとうろついたり、誰々はまだ帰ってこないのかと電話したり、しつけ・教育について口を出すことでストレスが溜まってしまいます。 甘え過ぎでは、子供の世話や介護をしてもらうことが当たり前になってしまい、相手のプライベートを奪うことに慣れてしまって、ストレスを与え続けることになりかねません。 サポートし合うことはとても大切ですが、依存してしまっては、一方に負担がかかり過ぎてしまいます。お互いに自立した大人として責任を持ち、相手を尊重した生活をすることが重要です。

知っておきたい「お金」のこと

これまで二世帯住宅のメリットとして、税金や補助金による費用負担の軽減をあげてきました。以下では、具体的な制度について解説していきます。

相続に関する「税金」について

小規模宅地等の特例

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人(親)が「住んでいた土地」・「人に貸していた土地」・「事業で使用していた土地」について、相続するときに評価額の80%を減額して課税する制度のこと。ただし、土地面積は上限330㎡とされています。 例えば、親が10,000万円の土地を持っていた場合、「10,000万円×80%=8,000万円」が減額され、「10,000万円-8,000万円=2,000万円」が課税対象となります。

住宅取得等資金の贈与税の非課税

「住宅取得等資金の贈与税の非課税」とは、住宅を建てるために、自分の親や祖父母から資金提供を受けるときには、300~1,500万円が非課税になる制度のこと。非課税限度額は、契約締結日や住宅の質によって決まります。 この制度によって、本来なら110万円を超える贈与には贈与税がかかりますが、300~1,500万円まで非課税になるのが特徴です。

二世帯住宅をサポートする「補助金」について

地域型住宅グリーン化事業

「地域型住宅グリーン化事業」とは、地域の良質な木造住宅建築を支援する制度のこと。H30年度は「長期優良住宅」を建築する場合に110万円、主要構造の木材に地域材を使う場合は20万円、三世代同居に対応する住宅を建てる場合は30万円を上限とした金額が補助されます。 また二世帯住宅とは直接関係ないですが、「長期優良住宅」以外にも「認定低炭素住宅」や「ゼロ・エネルギー住宅」なども補助金対象となるので、新築を考えている方は検討してみましょう。

すまい給付金

「すまい給付金」は、消費税の増税による費用負担を軽くするための制度で、2019年6月までに住宅を購入した方は、収入に応じて最大で30万円まで給付されます。 ただし不動産を親と子で共有登記する場合は、どれぐらいの割合で所有権をもっているかを数値化(持分割合)し、その割合によって給付基礎額が計算されるので注意しましょう。

親と子で協力する「住宅ローン」の組み方

親から子へ引き継いで返済する「リレーローン」

リレーローンは、最初に親が住宅ローンを組み、途中から子供へ引き継いで返済していくローンのこと。年収の高い親から返済を開始して、子どもの収入が安定してから引き継ぎできるメリットがあります。親は高齢であっても住宅ローンを組みやすく、子どもは収入の少ない時期に支払いせずに済むのが特徴です。

親と子で一緒に返済する「ペアローン」

ペアローンは、親子で同時に住宅ローンを組んで返済していくローンのこと。高額な借り入れができるようになり、住宅ローン控除も同時に受けられるメリットがあります。ただし、万が一に備えて親子ともに団体信用生命保険に入らなければなりません。

「生活費」は見える化して明確に管理

住宅ローンの返済などは、事前に話し合いを行い、毎月同じ金額を返済するので、管理しやすいお金です。しかし、同じく毎月発生する「生活費」は月によって金額が変わるので計算が難しく、不満が生まれやすいお金と言えます。 とくに水道光熱費は1家に1メーターしかない場合がほとんどなので、どちらかが一方が負担するうちに曖昧になってしまいます。そんなときは、光熱費をインターネットなどで一括管理できるサービスを利用してみましょう。金額を明確にして気持ちよく平等に負担することが可能です。

「メンテナンス費用」の分担を忘れずに

家を建てた後に、意外とかかってしまうのがメンテナンス費用。住めば住むほど修繕や設備の取り換えが必要になり、30~40年で数百万もかかるのが一般的です。 住んでいる間には子どもの養育費や老後資金でたくさんのお金が必要になりますので、あらかじめ親子世帯同士で話し合い、メンテナンス費用を確保するようにしましょう。

「子育てルール」や「共有部分ルール」は最初から話し合おう

親子世帯が気持ちよく過ごすためには、あらかじめお互いの意見をだし、共通のルールを作っておくのが大切です。とくに子育て方針などは、親世代と子世代では価値観も大きく異なりますので、しっかりと意思疎通できるようにしましょう。 ルールというと窮屈な印象かもしれませんが、一度決めたルールをずっと守る必要はありません。その時に一番良い方法を探って、少しずつ変えていくことで、常にお互いを尊重した生活をすることができます。

二世帯住宅に気兼ねする方は「近居」もおすすめ

これまで二世帯住宅のプライバシーを守る方法について解説してきましたが、やっぱり気兼ねしてしまう方もいらっしゃると思います。そんな方におすすめなのが、「近居」という生活スタイルです。 例えば戸建なら同じ町内、集合住宅であれば同じマンションに住むことで、プライバシーを守りながら安心できる距離感を保つことができます。

お互いのプライバシーを尊重できる二世帯住宅を

二世帯住宅は家族のコミュニケーションを増やしつつ、建築・生活コストの負担を減らすことができる生活スタイルです。親子世帯がよく顔を合わせることによるメリットはたくさんありますが、その分ストレスを感じやすいデメリットもあります。 プライバシーを尊重した家づくりをすることで、お互いが気持ちよく生活できるように工夫してみてくださいね。

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