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iemiru コラム vol.319

耐震補強をしていない人は多い?今こそ家の安全性を見直すべき時!

今こそ耐震補強が必要か見直そう

大きな地震が相次ぐ日本では、大地震の度に家の耐震性が見直されてきました。近年では、南海トラフ地震や、首都直下型地震の発生確率が上がる中で、改めて自分の家の耐震性を見直していくべき時なのかもしれません。 そこで今回は、あなたの家を地震から守る方法「耐震補強」について詳しく解説していきます。

そもそも耐震補強って何?

そもそも耐震補強とは、建物の耐震性を高めるために行われる補強工事のことを言います。建物の構造によっても工法は異なりますが、壁を強くしたり、屋根を軽くしたり、土台を強くしたりといった工事が行われます。

なぜ必要?

耐震補強の必要性は、過去の地震が教えてくれています。 2016年4月に起こった熊本地震は、記憶に新しいのではないでしょうか。短い間に震度6以上の揺れが7回も襲ってきました。この地震で倒壊した家は以下のような状況だったことがわかっています。 ● 旧耐震基準の木造建物…702棟のうち225棟が倒壊
● 新耐震基準の建物…1042棟のうち99棟が倒壊
※益城町中心部および周辺のデータ
このデータから、旧耐震基準では倒壊率32.1%、新耐震基準では倒壊率7.6%ということがわかりました。ここで注目すべきは「新耐震基準でも倒壊した家があった」という事実です。 これは、そもそも単発の大きな揺れには耐えられる基準である新耐震基準でも、想定外に繰り返す大きな揺れには耐えられない場合もあるということを示しています。ということは、旧耐震基準の家においては、さらに危険度が増すということです。 大地震の確率が高まる今だからこそ、過去の教訓を活かした耐震補強の必要性が高まっていると言えるでしょう。

耐震補強が必要な家とは

では、耐震補強が必要な家かどうかを判断する目安はあるのでしょうか?以下にご紹介する家に当てはまる場合には、一度、耐震診断を受けてみても良いかもしれません。

昭和56年以前に建てられた家

昭和56年6月1日よりも前に建てられた家は、いわゆる「旧耐震基準」で建てられた家ということです。この基準は、震度5強の揺れが起こっても、倒壊しない、破損しても補修すれば生活が出来るというものですが、震度6〜7の揺れに対して基準自体がありません。 ただし、この日付よりも前から新耐震基準の周知が始まっていたため、中には新耐震基準で建てられている建物もあるようです。逆に、新耐震基準の家でも、のちに増築したり、図面通りに施工されていない場合は安心とは言い切れません。 「昭和56年以前」という時期だけで判断せず、図面や構造計算書などがあれば、一度、設計士に見てもらうと良いでしょう。

老朽化が激しい家

家の老朽化が激しいと耐震性は低くなります。例えば、シロアリなどの害虫は、床下の湿った場所や水回りなどを好みます。シロアリは家の柱を食い荒らし、さらにボロボロになった柱に湿気が入り込むと、カビが発生し木材が腐る恐れもあるのです。 特に日本は高温多湿の国なので、家の寿命は欧米に比べてとても短いと言われています。普段からのこまめなメンテナンスは欠かせないと言えるでしょう。

1階に大きな空間のある家

1階がガレージや店舗、駐車場などになっている家は、一度耐震性をチェックしてみましょう。家の耐震性は、壁の量が多いほど高まります。 1階が柱だけで大きな空間がある場合には、壁が少ないことや、1階と2階の地震の力を分散するバランスが悪いため、耐震性が低い可能性があるのです。

大きな吹き抜けがある家

大きな吹き抜けがある家も、耐震性が低い可能性があります。これも同じく、壁の量に関係しています。家の耐震性を保つには、地震に抵抗する壁である「耐力壁」の量とバランスが大切なのです。 しっかりとした構造計算の上で建築されているか、他の部分で耐震性を補えているかなどが、地震への強さの分かれ道となるでしょう。

窓や壁が偏ったバランスの悪い家

家の中で、窓や壁の配置バランスが悪いと、地震が起きた時に大きく建物に「ねじれる力」が加わって、倒壊してしまう可能性が出てきます。 上記の吹き抜けや、1階部分が駐車場になっている家を含め、2階が一部分しかない場合や、大きな窓が集中する場所がある場合などは、特に注意が必要です。

耐震補強まではどんな流れ?

上記の家に当てはまった場合、耐震補強まではどのような流れで行えば良いのか、わからない方もいるのではないでしょうか? そこで、耐震診断から耐震補強までの流れをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

STEP1 耐震診断

まずは、あなたの家が地震にどのくらい強いのか「耐震診断」をして確認しましょう。耐震診断とは、建物の地震に対する強度や安全性、想定される被害を診断するものです。 耐震診断はいろいろな業者が行なっているので、インターネットで検索すればすぐに探すことが出来るでしょう。他にも、住宅診断の専門資格である「ホームインスペクター資格」を持った専門家に依頼するという方法もあります。 より詳しく確認したい場合には、建築士会が認定しているホームインスペクターに依頼するのが良いでしょう。

STEP2 補強案を検討

耐震診断を受けて耐震補強が必要となった場合には、それぞれの家に応じた補強案を具体的に検討していきます。あらゆる工法をあげてもらい、総合的に可能なものを選ぶようにしましょう。

STEP3 設計・見積もり

補強案を元に、それぞれの家の設備までを含めた設計をします。具体的な補強場所を確認していきながら、予算や希望などは遠慮なく伝えるようにしましょう。 その上で、設計書を作成していき、見積もりを出してもらいます。わからない点などはどんどん質問しても問題ありません。 ちなみに、耐震補強をする際に、同時にリフォーム出来るところは一緒に行なった方が良いと言われています。場合によっては費用が少なく済む場合も多いので、ぜひ他にリフォームが必要ではないかまで確認してみてください。

STEP5 施工

実際に施工していきます。工事にかかる日数は、金額や工事内容に違ってくるため、一概には言えません。あくまで参考程度ですが、一般的には長くて1〜2週間がかかる場合もあり、範囲が狭い場合には1〜2日で済むこともあるようです。

耐震補強の種類

具体的に耐震補強工事には、いろいろな種類があり、工法によっても補強工事の内容が変わります。ここでは、どんな種類の耐震補強工事があるのかをチェックしていきましょう。

壁を増設する

新耐震基準が出来た後に建てられた家は、家全体にバランスよく耐力壁という地震に強い壁が配置されています。ですが、旧耐震基準で建てられた家は、耐力壁が足りないことが多いのです。 耐力壁が足りない場合、今ある壁に筋交いを入れたり、新しい壁を作ったりして壁を補強していきます。この方法は、一番簡単な上に効果が高い方法なので優先度も高くなるでしょう。 闇雲に壁を強くするのではなく、きちんと構造上のバランスを考えた上で補強していく必要があるため、耐震補強の実績のある会社を選ぶと良いでしょう。

家の基礎を補強する

壁を強くして家自体が潰れないように補強したとしても、基礎がしっかりしていないと倒壊してしまうため、こちらも大切な工事となります。 そもそも基礎は、建物の揺れや重さを受け止めて地面に平均的に逃すという役割がある重要な部分です。そのため、家の基礎にひび割れがあったり、建物と一体化していない基礎には、この工事が必要となるでしょう。 ひび割れに関しては、エポキシ注入といったひび割れを直すだけの「補修工事」ではなく、特殊な繊維や樹脂を用いて強さを持たせる「補強工事」を行うことが大切です。

屋根を軽量化する

耐震性を上げるためには、屋根を軽量化することも大切です。そもそも建築基準法では、まず最初に屋根の重さなどを計算してから、柱や壁の量を決めていくというルールがあるのです。 こういったことからも、屋根の重さと耐震性は深い関係があることがわかります。特に重い屋根として、土葺き屋根や瓦屋根、セメント瓦があります。これらを軽い屋根であるコロニアルやルーガ、金属屋根などに変えていくことが有効です。 ちなみに一番重い土葺き屋根と、一番軽い金属屋根では重さに8倍もの差があります。屋根を変えるだけで、建物への相当な荷重を軽減することが出来るのです。

劣化部分を改善する

例えば、雨漏りする箇所やひび割れ、カビが生えた部分などは、その都度メンテナンスを行う必要があります。ですが、年数を重ねるごとに耐震性に影響が出るほど劣化してしまう部分も出てくるはずです。 劣化した部分をそのままにしておくと、湿気やカビなどによってどんどん劣化が進み、著しく耐震性が落ちてしまうことにも繋がります。しっかり改善すると共に、日常から家の劣化部分を確認し、メンテナンスする習慣をつけておきましょう。

接合部分を金物にする

過去の地震では、筋交いなどの接合部分に不具合があり倒壊している家が多くありました。地震の揺れによって接合部分が外れてしまったのでは、せっかくの筋交いも意味がありません。 壁の補強工事をする際には、接合部分の確認と同時に、丈夫な金物に取り替える工事を行うことが大切です。

耐震補強の業者選び!3つのポイント

先ほどご紹介した耐震診断と同じように、耐震補強はインターネットで調べれば多くの業者が見つかります。ですが、数が多いため、どこが信頼できる業者なのかを見極めることは難しいのです。 そこで、信頼できる耐震補強の業者を選ぶ際に参考になる「3つのポイント」を押さえておきましょう!

強引な勧誘をしない業者

悲しいことに、耐震補強業者の中には、無料で耐震診断をして無理やり工事を契約させる業者もいます。特に、利益を追い求めるような強引な勧誘や、無駄に不安を煽る業者には 注意が必要です。

古くから地元に根付いている業者

地元で長い歴史を持っている業者は、比較的信頼できる場合が多いと言えるでしょう。なぜなら、アフターフォローがよくなかったり、手抜き工事が発覚すれば、地元民に知れ渡り、顧客がいなくなってしまうはずだからです。 できるだけ、耐震補強の実績がある歴史ある業者を探してみましょう。

建設業許可を取得している業者

実は、500万円未満のリフォームや1500万円未満の耐震補強工事をする際、建設業許可は必須ではありません。 そもそも建設業許可を得るには、以下の厳しい要件を満たす必要があるため、許可を得ている業者の方が信頼度は高いと言えます。 ● 経営者経験が5年以上
● 専任技術者としての実務経験10年以上
● 資産が500万円以上
● 過去に不正な行為、不誠実な行為をしていない
この条件を満たすと「建設業の許可証」を受け取ることが出来ます。こういった許可証がある業者を選ぶのも1つの方法です。

耐震補強には補助金が出る?

市区町村によって違いがありますが、耐震補強に補助金が出る場合があります。耐震補強の補助金は、金額に対しての補助率、限度額、対象となる住宅が定められています。この額や割合は、現在住んでいる地域の自治体ホームページを見て調べてみてください。 また、耐震補強の補助金だけでなく、住宅の耐震補強を行うと税金が安くなる場合や、融資を受けられるなどの制度もあります。 この内、融資に関しては、住宅金融支援機構によるものなので、予算が心配な場合には問い合わせてみると良いでしょう。

耐震補強にまつわるワード

耐震補強について調べる時、いろいろな専門用語が出てきて困ってしまう方も多いと思います。そこで、耐震補強にまつわるワードを簡単に解説しましょう。

耐震・制振・免震

簡単にまとめると以下のような意味になります。 ● 耐震…倒壊しないよう建物自体を強くする
● 制振…揺れが小さく伝わるようにする
● 免震…揺れる力を建物に伝わらないようにする
耐震構造は、震度6の地震にも倒壊しない強度を保つ為に、耐力壁を強化した構造をいいます。一方、制振構造は、揺れや地震のエネルギーを低減するため、壁の中にダンパーやゴムを設置する構造です。 そして、免震構造は揺れ自体を逃して、建物を揺らさないために、積層ゴムやローラーといった免震材を使用した構造のことをいいます。

旧耐震基準と新耐震基準

旧耐震基準と新耐震基準は、以下のように分かれています。

 
   旧耐震基準 新耐震基準 
時期  1981年5月以前の建物  1981年6月以降の建物
震度5程度の地震  倒壊しない  倒壊しない
倒壊しても補修すれば住める
震度6〜7程度の地震  規定されていない 倒壊しない 

大きな違いは、震度6〜7程度の地震に対して、倒壊しないという基準が盛り込まれたことでしょう。この規定によって、新耐震基準の方が飛躍的に耐震性が高くなったのです。

耐震等級

耐震等級とは、地震に対する建物の強さのレベルを表したものです。それぞれ以下のような違いがあります。

 
耐震等級1 耐震等級2 耐震等級3  
阪神・淡路大震災のような地震でも倒壊しない 耐震等級1の1.25倍の強さ 耐震等級1の1.5倍の強さ
一般住宅の耐震  学校や病院、避難所となる建物の耐震  消防署や警察署などの防災拠点の耐震

耐震等級1に関しては、建築基準法の中でも最低ラインの耐震性になっています。住む人の命を守ることが最優先で、大地震の後には建て替えや住み替えが必要となります。 耐震等級2は、住む人の命を守ると同時に、大地震が起きても住み続けられるレベルの耐震性です。耐震等級3は、日本で最高レベルの耐震性です。耐震等級2と同じように、地震の後も住み続けていくことができます。

長期有料住宅

長期優良住宅は、長く住み続けられるようにいろいろな措置を施された優良住宅のことをいいます。ただし、長期優良住宅に認定されるには、いくつかの条件を満たさなければなりません。 詳しい内容は割愛しますが、その条件の中でも耐震性においては、耐震等級が2以上あることが条件になります。その際は、以下の内容をチェックすることになります。 ● 耐力壁の量
● 耐力壁の配置
● 床倍率
● 接合部分の強さ
● 基礎の強さ
この条件を満たさない場合には、免震構造かどうか、もしくは層間変形角といったものを確認する必要が出てきます。いずれにしても、長期優良住宅はいろいろな面で優遇されるので、自宅が該当しないかどうか確認してみても良いかもしれません。

耐震補強で家族の安全を守ろう!

大きな地震が相次ぐ日本において、建物の耐震性は常に進化してきました。また、熊本地震のように、新耐震基準でも倒壊する建物が出てきている事実から、今後さらに改定が加わるかもしれません。 そんな中でも、古くに建てられた「耐震基準を満たしていない建物」が多くあることもまた事実です。今こそ、家の耐震性について見直すべき時なのかもしれませんね。 国としても、耐震補強をする場合に補助金を出したり、その手続きを簡略化するなど、耐震補強を進めやすいように対策をとっているようです。ぜひこの記事を参考にしながら、あなたや家族の命を守るためにも、耐震診断から始めてみませんか?

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