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iemiru コラム vol.327

【一級建築士監修】建築業界における経審とは何?分かり易く解説します!!

経審は公共工事を請け負う建設業者にとって必ず行わなければならないこと!

「経審」と聞いても、建設業界に携わっていなければ聞き慣れない言葉で、何を意味しているのか理解できない人も多くいると思います。しかし、公共工事を請け負う建設業者にとっては必ず受けなければならない審査なのです。 この審査結果が会社の経営にも影響してくるほど重要なものになっています。今回は、この「経審」の審査内容や必要性を詳しく紹介していきます。

経審とは?

経審とは建設業法によって定められている「建設業者の経営に関する事項の審査等」のことです。、同法で「公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない。」と規定されており、決められた算定方法によって建設業者の能力を数値化することを言います。 経審は正式には「経営事項審査」と言い、建設業者が申請を行い審査が行われます。この「経営事項審査」は、どの発注機関が行っても同一の結果となるべきものですので、特定の第三者が統一的に一定基準に基づいて審査を行うことが効率的ですし、また、この審査自体が建設業行政ともに密接に関連していることから。建設業法により建設業許可に係る許可行政庁が審査を実施することとされています 経営事項審査を受けていることは、建設業者が公共工事に入札する際に必要不可欠な条件です。また、経営事項審査の結果をもとに、公共工事発注者が建設業者の能力を評価・ランク付けします。建設業者のランクは、発注する工事に対して最も適した建設業者を選定する上で必要な情報の一つとなっています。 そのため、公共工事を受注したい建設業者は経営事項審査を必ず受けることが求められています。

経営事項審査を受けなければならないのは誰か?

経営事項審査を受けなければならないのは、自治体等が発注する施設又は工作物に関する建設工事で、建設工事1件の請負代金額が、500万円以上(建築一式工事の場合は、1500万円以上)のものとなる公共工事を直接請け負う建設業者です。これは、建設業法により、1994年から義務付けられています。逆に言えば、自治体から直接公共工事を請け負わない場合は、審査を受ける必要はないということになります。 また、経営事項審査を受けるためには、建設業者が建設業許可を受けていることが前提となっています。 通常建設業許可は、建設工事費が500万円未満の場合不要になりますが、公共工事を請け負う場合は、500万円未満の小さな規模の工事でも建設業許可を受けておく必要があります。

公共工事を発注する機関は、工事を請け負う建設業者の資格審査を行う

公共工事を発注する自治体は、適正な工事費用で工事のクオリティーを確保することが求められるため、工事の内容や規模に見合った建設業者を選定する必要があります。 そのため、自治体は公共工事の入札の際に、入札に必要な参加資格や条件を定め、入札に参加しようとしている建設業者が定められた資格や条件をクリアしているかどうかについて審査を行っています。 資格審査を通過した上で、公共工事の発注者は「客観的事項」(経営事項審査)と「主観的事項」の審査を行い、その結果によって建設業者のランク付けを行います。

信頼出来る建設業者を選びやすくなる

大規模な物から小規模な物、道路や橋などの土木工事や施設の建築工事など、規模も工事の種類も様々あるのが公共工事です。また、建設業者も数多く存在しています。 そのため、経営事項審査によって建設業者の能力を数値化し格付けすることで、多種多様な公共工事と建設業者の適切なマッチングを実現しやすくするため、経営事項審査が行われています。 経営事項審査の結果から、各建設業者の得意分野や強みが第三者にもわかりやすく把握することができるため、公共工事の種類や規模に適した建設業者を選びやすくすることができます。

経営事項審査ってどんな審査をするものなのでしょうか?

経営事項審査は建設業者の能力を評価するために行われます。能力を評価するために、建設業者の実績や経営状況など複合的な視点から審査を行い、点数化していきます。 審査は、大きく分けて「経営規模等評価」と「経営状況分析」の2つの審査をし、評価を行っています。 では実際、経営事項審査で建設業者はどんな審査を受けているのでしょうか。

客観的事項における審査結果を点数化する目的

前述したように、「客観的事項」の審査はいわゆる経営事項審査のことを指していて、この審査では客観的規模等評価により、建設業者の経営規模や技術力などを評価し評点を付けていきます。 公共工事を発注する自治体が建設業者をランク付けする際に必要になる材料の一つが、この客観的事項における審査結果です。 そのため、審査結果の点数化は、公共事業を発注する自治体が建設業者にランク付けする際の判断基準として利用することを目的としています。 建設業者の点数とランクが分かると、「今回は規模の大きな工事なので、800点以上で上位ランクの建設業者の中から選定しよう」とか、「規模が小さいので500点程度で中位ランクの建設業者でも大丈夫」というように、工事の規模によって適切な建設業者を選定しやすくなります。

経営事項審査の審査内容

経営事項審査の審査内容は多岐にわたります。その内容は、「経営状況」・「経営規模」・「技術力」・「その他審査項目(社会性等)」の項目区分に分けられます。 それぞれの項目区分は更に細かい審査項目が決められていて、土木や建築など許可業種別に点数が付けられますます。 ・経営状況:許可業種別の完成工事高、自己資本額、利払前税引前償却前利益 ・経営規模:負債抵抗力、収益性・効率性、財務健全性、絶対的力量 ・技術力:許可業種別の元請完成工事高、許可業種別の技術職員数 ・その他審査項目:労働福祉の状況、建設業の営業継続の状況、防災活動への貢献の状況、法令遵守の状況、建設業の経理の状況、研究開発の状況、建設機器の保有状況、国際標準化機構が定めた規格による登録の状況、若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況  

専門の分析機関が行う審査がある

これらの審査のうち経営状況の分析は、国土交通省に許可された民間の分析機関が行います。分析機関は、建設業者が提出した資料をもとに財務状況を点数化します。 経営分析の審査項目は以下になります。 ・純支払利息比率 ・負債回転期間 ・売上高経営利益率 ・純資本売上総利益 ・自己資本対固定資本率 ・自己資本率 ・営業キャッシュフロー ・利益剰余金 経営状況分析以外の審査は都道府県知事や国土交通大臣など許可行政庁に経営規模等評価申請書を提出し審査してもらいます。その際必要になるのが経営状況分析の結果通知書です。 経営分析の申請方法は分析機関によって異なり、電子申請や送付による申請など様々です。分析を依頼する機関の申請方法や手数料など事前に確認しておきましょう。 また、申請には財務諸表などの資料が必要です。財務諸表は、建設許可を受けている業者が毎年決算日から4ヶ月以内に許可行政庁に届け出する決算変更届に必要な報告書です。初めて経営状況分析の申請をする場合は、3年分の財務諸表が必要になります。

経営事項審査には有効期限がある

経営事項審査の審査結果には有効期限があり、審査基準日から1年7ヶ月と定められています。注意したいのは審査基準日がいつなのかということです。審査基準日とは「申請した日」でも「結果通知書が交付された日」でもなく、「申請直前の決済日」となります。 例えば、2018年3月31日が決算日で申請を2018年7月1日に行い、2018年8月1日に結果通知書が交付されたとします。この場合、申請日も結果通知書交付日も関係なく、2018年3月31日が審査基準日なります。 この日から1年7ヶ月後の2019年10月31日までが有効期限日となります。 経営事項審査は経営状況分析と経営規模等の審査それぞれの審査に時間が必要になります。切れ目なく経営事項審査を受けた状態を維持するためには、決算終了後早めに次の経営事項審査の申請を行い、結果通知書を受けている必要があります。7か月というのは、新たな経審を受ける為の猶予期間にあたります。

「客観的事項」(経営事項審査)と「主観的事項」

経営事項審査は、税金によって行われる公共工事は公平公正である必要があり、その、公共工事を行う建設業者の能力を適正に評価し、公平に選定することができるように法制化されました。 経営事項審査が義務付けされたおかげで、一定の水準を持った施工業者を把握することが容易になると同時に、ペーパーカンパニーや暴力団関連の建設業者など不良不敵格業者を排除することが可能となりました。

建設業者を公平公正に判断しなければならない

一般競争入札とは、自治体が公共工事の入札情報を公示し、参加者を募る方法です。参加する業者を限定せず、資格があれば誰でも入札に参加できることが特徴です。 建設業法によって、自治体が公共工事を行う際は、原則としてこの一般競争入札によって建設業者を選定することが決められています。 自治体が入札を行う目的は、公平公正に建設業者を選定し、適切な施工と工事金額により良質な社会的財産を整備することにあります。 建設業者が公共工事を直接自治体から請け負うには、このように適切に評価される一般競争入札によって複数のライバルに勝ち抜くことが必要なのです。 そして、自治体が客観的かつ公平公正に建設業者を評価する材料として、経営事項審査の審査結果が用いられています。

悪質な建設業者の排除

一般競争入札に参加するには、経営事項審査の結果通知書が必要になります。そのため、公共工事を受注したい建設業者は経営事項審査を受けますが、できるだけ高い金額の公共工事を受注したいと考える建設業者の中には、虚偽の申請をする業者もでてきます。 このように経営事項審査で不正が発覚した場合、営業停止処分の罰則を受けることになります。罰則を受けると会社の評価が下がり、ランク付けにも大きな影響を及ぼします。 現在では虚偽申請の防止措置が強化され、不正の疑いがある申請の抽出基準の見直しや、経営状況分析機関と審査行政庁の連携強化がされています。そのため、昨年度と比べて極端に大きな数値の差があり水増しの可能性がある場合など、疑わしい申請はすぐに判明するような対策が講じられています。 虚偽の疑いがある場合は、追加書類等の提出などにより、具体的な内容が問われることになります。 このような措置のおかげで、悪質な建設業者は経営事項審査を通過することができず、一般競争入札に参加できない仕組みになっています。

自治体が決めるランクもある

前述したように、公共工事を発注する自治体は、「客観的事項」(経営事項審査)と「主観的事項」の審査結果を点数化しランク付けを行います。客観的事項は経営事項審査の審査結果をもとに評価を行いますが、「主観的事項」については、それぞれの自治体が独自の審査方法によって評価を行っています。 この「客観的事項」と「主観的事項」2つの審査結果によって自治体は、AからCの三段階評価や、AからDの4段階評価を行いランク付けしています。ランクが高いほど、受注できる公共工事の金額が大きくなります。 ランクが高ければ金額の大きな公共工事を受注できる可能性がありますが、金額の低い公共工事は受注ができなくなります。その逆で、ランクの低い建設業者は金額の高い公共工事の受注はできません。 なぜランクによって受注できる工事とできない工事があるのかというと、公共工事発注者が行う「入札参加資格の格付制度」によってランク付けされた段階評価によって、受注できる工事金額の範囲が決められているためです。 そのため、ランクが高いことが全ての建設業者にとって良いことだとは限りません。建設業者は自社がどの工事金額の範囲の公共工事を目指しているのか検討することが必要です。努力して高いランクで評価してもらうことができたとしても、自社が目指す金額の公共工事が受注できなくなってしまっては意味がありません。

ランク決めの問題点

「主観的事項」の審査内容は各自治体が基準を作り、公平に行うことが基本となっています。一般的な審査内容は、次のような項目になります。 ・地域内の過去の工事実績や表彰はあるか ・地域内の本店の有無 ・地域内の営業実績 ・ISOの取得の有無 ・消防団協力事業所の認定があるか ・高齢者雇用事業所の登録をしているか ・女性管理職雇用事業所の認定があるか ・建設業労働災害防止協会への加入状況 しかし、すべての自治体でこの「主観的事項」の審査を行なっているわけではありません。また、「主観的事項」の評価を行っている自治体でも、その審査結果や建設業者のランクを公表していない所もあり、必ずしも公平性や透明性が確保されているとは言えません。そのため、「主観的事項」の審査に関しては、公平性が疑問視されています。

経営事項審査による点数はどのようにつけられる?

経営事項審査の審査による点数は、決められた算定式を使います。そのため、主観的な評価は反映されないため、客観的に公平な評価が行われています。 算定に必要な数値は、経営事項審査で評価された点数が使われます。どんな算定式で評価点が決まるのか、詳しく見ていきましょう。

総合評定値=P点とは?

総合評価値はP点と呼ばれ、経営規模等の評価結果と経営状況分析の結果を算定式に当てはめ建設業者を総合的に評価したものになります。 総合評点を取得するには申請が必要です。経営規模等評価申請の際に経営状況分析結果通知書を提出し、同時に総合評点の申請を行う必要があります。 総合評定値 P = 0.25 X1 + 0.15 X2 + 0.2 Y + 0.25 Z + 0.15 W (総合評定値は、小数点を含めて合計を計算した上で小数点第1位を四捨五入します) ・X1:業種別の完成工事高(評点幅:397~2309) ・X2:自己資本学と平均利益額(評点幅:454~2280) ・W:その他の審査項目(社会性等) ・Y:経営状況分析の結果(評点幅:0~1595) ・Z:業種別の元請け工完成工事高と業種別の技術職員数(評点幅:0~1900) これらの各項目で算出される点数には上限と下限があり、この範囲の中でそれぞれ点数が付けられます。 また、総合評定値は業種ごとに評価が必要なため、請け負いたい公共工事の業種ごとに総合評定値の取得が必要です。そのため、一つの会社で一つの総合評定値を取得しているとは限りません。

経営事項審査の平均点

それぞれの評点や、総合評定値はおよそ700点になるように設計されています。公共工事を発注する自治体は700点を基準ラインとすることで、発注する工事の規模に対して適切な建設業者を選ぶ際の目安にすることができます。 また、建設業者は自社がどの審査項目が強くてどの審査項目が弱いのかを確認することができます。どの審査項目を強化すればランクが上位になるかを知ることで、自社が目指すランクに効率的に近づけることが可能です。 つまり、経営事項審査の点数は自治体がランク付けするために必要な数値ですが、建設業者が公共工事を請負う業者全体の中で、どのレベルにいるのかを知る事ができる数値でもあります。 総合評定値(P点)の最高得点は2,136、最低点は281点となっています。現実的には1,000点を超えることは難しく、800点を超えるとかなり優秀な建設業者とされています。

経営事項審査は信頼のバロメーター

紹介してきたように、経営事項審査は建設業者を様々な角度から客観的かつ公平に評価しています。この評価をもとにランク付けされ一般競争入札によって選ばれた建設業者は、発注された公共工事の内容に適した能力を持っていると言えます。 不特定多数の利用者が使うことになる公共工事はより安全で、無駄なコストがかからないことが求められます。そのため、経営事項審査を通過し適切な手順で建設業者を選ぶことが大切になります。

経営事項審査を通過しているかチェックしよう

経審情報の閲覧は、新規で建設業者と取引をしたい時など、情報収集にも活用が期待できます。 経営事項審査の審査結果は、一般財団法人建設業情報管理センターのホームページから誰でも閲覧できるようになっています。 チェックしたい許可番号と大臣知事コードを入力するか、チェックしたい建設業者の商号名称と大臣知事区分を入力して、経営事項審査を通過していることを確認してみましょう。 また経営事項審査を通過していることを確認できるだけでなく、総合評定値や、審査項目ごとの数理も公表されています。さらに、経営状況分析機関には結果通知書の写しを公表している所もあるので、気になる方は審査結果も合わせてチェックしてみましょう。

【監修】吉森 新平(一級建築士)

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