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iemiru コラム vol.393

床暖房を効果的に使う方法とは?メリット・デメリットと床暖房の選び方

床暖房は部屋の空気を汚さず乾燥しにくいため、快適な温かさに保ってくれる特徴があります。ただ、設置するには多くの時間と費用がかかるため、まだまだ利用数は多くありません。 そのため、床暖房を検討していても「設置するならどんな床暖房がいいの?」「コストが安いのはどれ?」など、不安や疑問は多いはず。購入を検討するなら、悩みや不安はしっかり解消しておきましょう。本記事は、床暖房の種類や特徴について詳しくご紹介していきます。

床暖房の効果とは?

床暖房にはヒーターやエアコンとは違った優しい温かさがあります。また、熱を発するのは床だけですが、時間が経つと部屋全体がほんわかと温かくなります。そんな床暖房にはどんな「温め効果」があるのでしょうか?

部屋全体を均一に温めてくれる

床暖房は足元だけが温かくなるイメージがありますが、そんなことはありません。床暖房による熱が壁や天井へ反射することで室内全体を温めてくれます。 床暖房が部屋を温める原理は「輻射熱(ふくしゃねつ)」が関わっています。 輻射熱は、床から出た熱(赤外線)が壁や天井まで到達し反射することで部屋の中を均一に温めます。サウナも同じ原理を利用しています。 一方でエアコンやファンヒーターは、足元は寒く天井付近が温かい状態になりやすい特徴があります。これらの暖房器具は空気を温めて熱を伝えています。空気は温まると上昇し冷えると下降する性質があるため、部屋を均一に温めることができません。

心地よい暖かさを感じられる

床暖房は、ヒーターやエアコンにはない心地よい温かさがあります。その理由は足元からの輻射熱にあります。 晴れた日に太陽が部屋を温めるのも輻射熱の作用によるもの。そのため床暖房には、陽射しのようなぽかぽかと柔らかい温かさがあるのです。 また、足元から温めることで「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」という状態を保ちます。頭の温度は上昇させずに足元を優先的に温めることで、体がリラックスした状態になります。また血流が促進することで冷え性の改善、体の巡りが良くなり体調改善や安眠効果もあると言われています。

床暖房のメリット

エアコンやヒーターで肌が乾燥したり、喉が痛くなったことはありませんか?床暖房にはそのような欠点はありません。床暖房には冬の悩みを解決してくれる、様々なメリットがあります。

室内を綺麗な状態に保ってくれる

床暖房は空気をキレイに保ちながら部屋を暖めてくれます。例えば、石油ストーブやファンヒーターは水蒸気を多く発生させるため、部屋の温度が上昇すると結露を発生させます。結露が発生すると、カビやダニが繁殖しやすくなります。また暖かい空気が部屋中を循環する際に室内のチリやホコリを舞い上げ、アレルギー症状を起こしやすくします。 その点、床暖房はハウスダストを巻き上げることはなく、さらに足元を湿度の低い状態に保つため、ダニやカビが発生しにくい環境にしてくれます。花粉症やアレルギーのある人にとっては最適な暖房器具と言えます。

空気や肌が乾燥しにくい

エアコンで部屋を暖めると肌が乾燥してしまう人は多いはず。空気が温まると湿度の割合が低下して、肌の水分が蒸発しやすくなるからです。喉や鼻の粘膜も乾燥するため風邪を引きやすくもなります。 しかし、床暖房は湿度が変化しにくいため、乾燥をほとんど感じません。加湿器を用意する手間やコストも抑えられます。

収納場所が必要ない

石油ストーブやヒーターは設置するスペースや使わない時期は収納場所が必要です。一方、床暖房は床に埋め込まれているためスペースを取りません。またコードやコンセントも使用しないため、子どもや高齢者にとっても安全性が高く、インテリアの邪魔になることもありません。

床暖房のデメリット

床暖房はメリットばかりでなくデメリットもあります。設置する前にしっかり確認しておきたい床暖房のマイナスポイントをチェックしてみましょう。

設置コストが高い

床暖房が他の暖房器具よりも普及しづらい理由は、コストの高さにあります。新築住宅で床暖房を取り付ける場合、およそ60万~80万円程度かかります。リフォームとして後から取り付ける場合は、床材をすべて取り外してから設置するため100万円を超えることも珍しくありません。安いものでも上から重ねるタイプで約30万~40万円ほどかかります。

床暖房だけで一部屋温めるのは難しく、ランニングコストがかかる

寒い冬の冷えんだ日は、床暖房だけで部屋を温めることが難しいのが現状です。寒さが厳しい地域では、エアコンやヒーターなどで空気を温めながら、床暖房を併用することが多いようです。 また床暖房はエアコンなどの暖房器具と比べて、毎月のコストが高くなる傾向があります。立ち上げる際に時間がかかる上、フローリング材を挟むので温かさを持続するには多くのパワーが必要です。 朝と夜だけ使用する場合でも床暖房の使用料金だけで月に10,000円程度、1日中使っていると15,000円以上になることもあります。

部屋が温まるまでに時間がかかる

床暖房の温度は25~30℃です。床暖房だけでは部屋の温度をすぐに上昇させるのは難しく、起動させてから部屋全体の温かさを感じるまでには約1~2時間以上かかります。 そのため、起床する2時間前に起動できるようタイマー設定したり、快適な室温になるまでは暖房器具を併用すると時間を短縮できます。

故障した際の修理が大変

床暖房が故障した際には、フローリング材を剥がして中の様子を見る必要があります。故障した部分が直らなければ新しいものと入れ替えたり、劣化したフローリング材や下地も一緒にリフォームすることもあります。 修理代は電気式床暖房で約30万円以上、温水式床暖房だと給湯器も取り換えるため約60万円以上かかります。また配管工事やリフォーム工事費などを併せるとさらに補修費用が必要になる場合もあります。

電気式床暖房とは?

床暖房は「電気式床暖房」と「温水式床暖房」があります。それぞれの特徴は異なるため、ライフスタイルやお住まいの気候に合わせて選ぶことが大切です。まずは電気式床暖房の特徴を見てみましょう。

床下に設置したヒーターを放熱させる暖房

床下に電熱線のヒーターを張り巡らせ、そこに電気を通すことで温めます。床下には、断熱材や下地を敷きヒーターを入れ、その上にフローリング材をかぶせます。 電気式床暖房の中には蓄熱式床暖房といって、電気代が安い深夜の電力を使い蓄熱しておくタイプもあります。

電気式床暖房のメリット・デメリット

電気式床暖房は古くから使われており利用数が多い床暖房です。信頼があり導入しやすいことがメリットですが、温まるまでに時間がかかったり、ランニングコストが高いといったデメリットがあります。

温度調節がしやすい

設置したヒーターには温度を調整するサーモスタットや温度ヒューズが設置してあります。温度調整がしやすいため、住まいの気候に合わせて最適な温度で使うことができます。 なかでもPTCヒーター式床暖房は温度センサーが付いているため、部分的に設定温度を変えることができます。陽射しが当たる部分は発熱を制限したり、冷えやすいトイレやキッチンは高めに設定するなど、無駄なく快適に使うことができます。

構造がシンプルで施工しやすい

電気式床暖房の設置は電熱線のヒーターパネルを敷くだけなので、施工しやすいことがメリットです。工事も簡単で短時間で完了するため、リフォームでも導入しやすい仕様です。 また、大きさを柔軟に変えられるため、部分的に床暖房を設置したい時やトイレなどの省スペースのみに設置したい時は電気式床暖房が優位です。

日頃のメンテナンスが不要

電気式床暖房は構造がシンプルで耐久性があります。使用を続けても30年はメンテナンスが必要ないと言われています。ただし長期間の使用で劣化が生じると、定期的なメンテナンスが必要になることもあります。

適温になるまで時間が必要

トーストやオーブンをイメージするとわかりやすいと思いますが、ヒーターが温まりフローリングに熱が伝わるまでには、かなりの時間がかかります。その後、部屋全体の温度が上昇するにはさらに時間が必要で、快適と感じるまでには2~3時間かかります。

初期費用は安いがランニングコストがかかる

工事が簡単なので施工費用は比較的安く済みますが、使用時のコストが高い傾向にあります。電気式床暖房は、立ち上がりに時間がかかるうえパワーも必要です。また、使用する電力が増えれば住まいの電気容量を上げることになるため、基本料金・電気使用料金共に増えることになります。

温水式床暖房とは?

温水式床暖房は、お湯の温かさを利用した床暖房です。「温水式電気床暖房」は電力でお湯を沸かす方法、「温水式ガス床暖房」はガス給湯器でお湯を沸かす方法です。立ち上がりがスピーディでランニングコストが安いメリットがあります。

温めた温水を床下に循環させて温める暖房

床下に温水が通るパイプを敷き詰め、そこにお湯を流すことで床を温めます。温水式電気床暖房は、電気で稼働するヒートポンプの熱を使い温水を作ります。温水式ガス床暖房は、給湯器で温めた温水を使います。特に寒い日は、温度の高いお湯を流すことでスピーディに床を温めることができます。

温水式床暖房のメリット・デメリット

温水式床暖房には電気式とは異なるメリット・デメリットがあります。

温まりが早く、余熱も残りやすい

ヒーターのように熱が伝導することを待つことはなく、既に熱くなったお湯が巡るため温まりが早いことが特徴です。 また、床暖房を切った後でもお湯が冷めるまでは余熱があるため温かさが持続します。スイッチを切ってから約30分は余熱が続きます。

低温やけどが起きにくい

温水式床暖房の床の温度は約38~40℃程度です。そのため、低温やけどをする心配がありません。対して、電気式床暖房は床の温度が約45℃程度にまで上げることができます。低音やけどをしないように長時間の接触をせず、こもり熱を解消したり温度調整をすることが必要になります。

定期的なメンテナンスが必要

温水を通すパイプはほぼメンテナンスが不要ですが、給湯器や不凍液にはメンテナンスや交換が必要です。 寒冷地ではポンプ内の水が凍らないように不凍液を使用しますが、この不凍液は約10年で交換する必要があります。また、お湯を温めている熱源機が故障した際には、部品交換またはすべて新しいものに入れ替える必要があります。一般的な給湯器の耐久年数は平均しておよそ10年と言われています。

初期費用は高いがランニングコストは低い

温水式床暖房は温水パイプだけでなく熱源機も使うため、設置時の初期費用が高くなります。しかし、ランニングコストは電気式床暖房と比べて比較的安い傾向にあります。 お湯を一度温めてしまえばその後はパワーをあまり使わないため効率的に部屋を温めることができます。さらに立ち上がりが早いことや、スイッチを切った後も余熱で効果が持続することもコスト削減へ繋がります。

床暖房の設置の際に考えること

床暖房の設置をする際に、チェックしておくべき項目をまとめました。

既存の床への直張りか、床を全面張り替えるか

リフォームして床暖房を導入する場合は設置方法が2パターンあり、既存の床の上へ直張りするか、または既存の床を剥がしてから設置する方法があります。 直張りとは、既存の床の上にヒーターパネルあるいは温水ポンプを設置し、その上からさらに床材を張ります。床材を剥がす手間が減るため設置コストが安くなります。ただし、床材が二重になることで、床の高さが数ミリほど高くなります。バリアフリーを検討している場合は、床材を剥がしてから設置することをおすすめします。

建物全体の断熱性が高いかどうか

床暖房を最大限に利用するには、家全体の断熱性をあげるとより効果的です。窓やドアから冷気が入りやすいと、床暖房によって発生した輻射熱が冷やされてしまいます。窓はペアガラス、ドアは断熱ドアにするなどの断熱性をアップさせる工夫も必要です。

床暖房に対応したフローリングを選ぼう

床暖房を導入するなら、熱に強いフローリング材にする必要があります。一般的には、床暖房専用のフローリング材を導入すれば間違いありません。 ごく普通の住宅でよく使われる複合フローリングは、熱に弱く反り返ったり、ヒビが入ることがあります。また、自然木でできている無垢フローリングも熱に弱く形が変化しやすい床材です。 床暖房に向いている床材は、竹フローリングや挽板(ひきいた)フローリングです。竹材は温度による変形が少なく熱伝導も良い材質です。挽板とは、合板よりも厚く切り出した板を重ねて作ったもので、見た目は無垢のような自然な質感が特徴です。中身は合板で上部に作られているため変形が少ない性質があります。

床暖房を効果的に使うためには

床暖房は使い方を工夫すると、より快適な住空間を保ちやすくコストダウンにもなります。

適切な暖房器具を併用する

暖房器具にはそれぞれ得意・不得意があります。天井が高く広い部屋を温める場合は、エアコンを併用し、温かい空気を循環させたほうが早く温まります。 短時間だけ使いたい場合やスポット的に温めたい場合は、ハロゲンヒーターのほうが効率的です。目的やその時の都合に合わせて、暖房器具を選んで使うとよいでしょう。

室内の断熱効果を高める

床暖房で効果的に部屋を温めるには、できるだけ熱を外に逃がさないようにすることが重要です。室内の熱の約6割は窓から逃げていきます。断熱性を高めるカーテンや障子はしっかり閉めておきましょう。窓に直接貼れる断熱フィルムや断熱ボードの使用もおすすめです。

使用時間を限定する

床暖房はスイッチを切った後も余熱があり、しばらくは温かさが持続します。そのため、就寝や外出時直前に切るのではなく、部屋を出る約30分前に切るとその分コストを節約できます。タイマーを使えば消し忘れを防ぐことができます。 床暖房の性質を上手く利用し、使用時間を限定することで上手にコストダウンに繋がります。

部屋に合わせた床暖房を選ぼう

床暖房を選ぶ基準は、設置する部屋の使い方やライフスタイルに合わせると効率的です。電気式床暖房と温水式床暖房、それぞれの長所を活用できる選び方がよいでしょう。

一時的に利用する部屋には電気式床暖房がおすすめ

電気式床暖房は、部分的に小スペースで設置でき初期費用も安いことから、トイレやキッチンなどに適しています。またランニングコストが比較的高くなるため、使用が短時間である場所がおすすめです。

家族が集まる部屋には温水式床暖房がおすすめ

家族がゆったりと過ごすリビングは温水式床暖房がおすすめです。座ったり寝転んだりする場合は、低温やけどの心配がない温水式床暖房が安心です。また温まりも早くコストが安いことから、広範囲に長時間使う場所に最適です。

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