iemiru コラム vol.414
耐震構造ってどのくらい地震に強いの?地震に強い家はこれ!
耐震構造ってなに?
地震大国である日本の住宅に、不可欠といえる耐震構造。過去、大きな震災を経験する度に、耐震構造は進化してきました。家の購入を考えている皆さんにとっては、耐震構造の仕組みや、本当に地震に強い家とは何かについて、知りたいと思われている方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、耐震構造について徹底解説します!地震が建物に与える影響や、日本の耐震等級について理解を深めることで、後悔しない家探しのヒントになるかもしれません。
耐震構造とは
耐震構造とは、地震の揺れに対して強い構造のことをいいます。そもそも、建物というのは、重力に抵抗するように造られているので、上下の揺れに対しては強いという特徴があります。 ただし、地震の揺れというのは、上下の揺れだけではありません。同時に左右への揺れや、壁や天井などの接合部分にかかる回転する力などがあります。耐震性の低い建物は、これらの力に弱いのです。 そこで、そのような揺れにも対応できる住宅を実現した構造が、耐震構造というわけです。
どうして耐震構造が必要なの?
日本は、過去数十年の間だけでも、何回も大きな地震を乗り越えてきました。その中でも、阪神・淡路大震災のデータでは、亡くなった方の8割が、建物の倒壊によるものだったということがわかっています。 もしも、住宅の設計がもっと地震に耐えられる設計になっていれば、建物の倒壊による死亡をもっと減らすことができるのではないでしょうか。また、地震が起きた後も、修復は最低限で完了し、いつも通りの生活に早く戻ることも可能になるはずです。 こういった理由から、日本で安心して暮らせる家を建てるためには、耐震構造は必要不可欠といえるでしょう。
地震が与える影響
続いては、地震が建物に与える影響をご紹介しましょう。一般的に、建物に影響があるのは、震度5以上の揺れからと考えられています。地震の揺れで、どのような影響があるのかを知ると、より耐震構造の大切さを実感することができるかもしれません。
木造住宅への影響
木造住宅の場合、耐震性の弱い家と、強い家ではその影響の仕方が変わってきます。まずは、こちらの表をご覧ください。
震度 | 耐震性の低い家 | 耐震性の高い家 |
---|---|---|
震度5弱 | 壁に軽いひび割れや亀裂みられる場合がある | - |
震度5強 | 壁にひび割れや亀裂がみられることがある | - |
震度6弱 | さらに大きなひび割れや亀裂、瓦の落下や建物が傾くこともある | 壁に軽いひび割れや亀裂がみられることがある |
震度6強 | ひび割れや亀裂が多くなり、建物の傾きや倒壊が増える | 壁にひび割れや亀裂がみられることがある |
震度7 | さらに建物の傾きや倒壊が増える | ひび割れや亀裂が増え、まれに傾くことがある |
このように、耐震性の違いによって、被害やその後の生活への影響に大きな差が生まれることがわかります。
鉄筋コンクリート造の影響
続いては、鉄筋コンクリート造の建物に与える地震の影響を確認してみましょう。鉄筋コンクリート造は、一般的にはマンションなどの建築物によく使われる工法です。一見、地震には強そうに見えますが、実際はどうなのでしょうか?
震度 | 耐震性の低い家 | 耐震性の高い家 |
---|---|---|
震度5強 | 壁、梁、柱などにひび割れや亀裂がみられることがある | - |
震度6弱 | 壁、梁、柱などにひび割れや亀裂が多くみられるようになる | 壁、梁、柱などにひび割れや亀裂がみられることがある |
震度6強 | 壁、梁、柱などにX状のひび割れや亀裂がみられることがある。1階や中間階は柱が崩れたり倒れることもある | 壁、梁、柱などにひび割れや亀裂が多くみられるようになる |
震度7 | 壁、梁、柱などにX状のひび割れや亀裂が増える。1階や中間階で柱の崩れや倒れるものも増える | 壁、梁、柱などのひび割れや亀裂がさらに多くなる。1階や中間階は変形したり、傾くものも出てくる |
一般的には、昭和56年以前の鉄筋コンクリート造の建物の方が耐震性は弱く、それ以降に造られた建物は耐震性が高いという傾向にあります。
高層ビルへの影響
最後に、都心などに目立つ高層ビルへの地震の影響についてです。地震が起きた時、高層ビルには「長周期震動」と呼ばれる、ゆっくりとした大きな揺れが発生するという特徴があります。 この長周期振動によって、ビル内部ではパソコンやプリンターなどの機器が大きく移動するなどの危険が発生するのです。筆者も、東日本大震災が起きた時、都心の30階のビルの中にいました。非常に大きく長い揺れが数分続き、うまく歩くことはおろか、揺れに酔って吐いてしまうほどでした。 このように、建物の種類によって地震から受ける影響が違ってくることがわかります。これは同時に、建物の特徴に応じた耐震対策をとらないと意味がないということでもあるのです。
耐震、制震、免震の違いとは
建物の地震対策には、一般的に耐震構造が最も多く採用されてきました。ですが、近年では、制震構造、免震構造と呼ばれる新しい構造も出てきています。 そこで次は、耐震構造、制震構造、免震構造の違いを解説しましょう。
揺れに耐える耐震構造
耐震構造は、主に揺れに耐えることを目的としている構造のことをいいます。具体的には、骨組みの中に筋交いを入れたり、柱や梁などの接合部分を丈夫な金物で固定したり、補強するなどの対策が施された構造のことです。 耐震構造は、比較的簡単に施すことのできる工法なので、一般的に最も多く取り入れられています。ただし、建物全体をがっちりと強く造るため、揺れに対する柔軟性は期待できません。柔軟性がないと、揺れをダイレクトに建物で受け止めることになります。 柔軟性がない建物は、倒壊はしないものの、家具が動いたり、棚の中のものが飛び出すといった危険性があることを認識しておかなければなりません。
揺れを吸収する制震構造
制震構造の一番の特徴は「揺れを吸収する」という点です。まず初めに、骨組みの中に筋交いや合板などを設置してから、建物内部にダンパーと呼ばれる震動を低減する装置を組み込む構造になっています。このダンパーの弾性が、地震の揺れのエネルギーを吸収するというわけです。 特に、2階以上の構造部の揺れを抑える効果が高いため、今までは高層ビルを中心に使われてきました。ですが、近年ではだんだんと戸建住宅にも用いられるようになってきています。
揺れを伝えない免震構造
免震構造は「揺れを建物に伝えない」という特徴をもっています。ゴムや、ボールベアリングと呼ばれるもので作られた免震装置が、地面の揺れを建物に伝えません。もちろん多少の揺れは感じるものの、気象庁の発表した震度ほどは感じない安心感があるといえるでしょう。 また、揺れが少ないことから、家の中のものが散乱することを防げる点もメリットといえます。ただし、免震構造はコストがかかるというデメリットもあります。さらに、縦揺れにはあまりメリットがないともいわれており、まだまだこれからの改良に期待したい構造です。
地震に強い構造はどれ?
さて、それぞれの構造について、なんとなくイメージできましたか?続いては、実際に地震が起きた時に、それぞれの構造がどう働くのかについて解説します。
実際に地震が来たらどう違う?
まず、耐震構造の場合は、建物自体が「倒壊しないこと」が目的なので、強く造られてはいますが、揺れを抑えることはありません。ですので、当然、建物自体は揺れます。そのため、建物内部の家具が倒れたり、損傷する可能性も考えられるでしょう。 一方、制震構造の場合、高層階への揺れ軽減効果は見込めますが、全く揺れないということではありません。それでも、内部に設置したダンパーが揺れを吸収するので、建物自体への被害は耐震構造よりも少ないといえるでしょう。 最後に免震構造ですが、建物の下に免震層を作る構造なので、建物自体に揺れが伝わりません。揺れが伝わらない分、建物全体への被害や、建物内部の家具などの被害を少なく抑えることができます。
揺れを伝えない免震構造がリード
免震構造は、揺れを建物に伝えないため、建物へのダメージだけでなく、家具の転倒なども少ない構造といえるでしょう。揺れによる建物への被害が少ないので、地震が起こった後でも同じ我が家に住み続けることができます。 これらのことから、3つの構造のうち最も地震対策として有効なのは、免震構造といえるかもしれません。ただし、コストの面もあるのか、まだまだ免震構造を採用する方は少ないのが現状です。
複合パターンも安心
近年では、耐震構造、制震構造、免震構造を組み合わせる複合パターンも注目されています。例えば、免震構造の土台の上に、耐震性能の高い建物を建てる事で、より地震に強い建物にすることも可能です。 価格は高くなりますが、近く起こるとされる首都直下型地震や南海トラフ地震の影響を考えると、積極的に取り組みたい対策といえます。
進化してきた日本の耐震事情
日本の耐震構造の効果は、実際の地震でも立証されています。次は、近年に起こった大地震を振り返ると同時に、どのように日本の耐震事情が進化してきたのかを確認してみましょう。
近年に起こった大地震
まず、近年に起こった大きな地震を振り返ってみましょう。
● 1995年 阪神・淡路大震災…M7.2 家屋全壊104,906棟
● 2003年 十勝沖地震…M8.0 家屋全壊116棟
● 2004年 新潟県中越地震…M6.8 家屋全壊3,175棟
● 2007年 新潟県中越沖地震…M6.8 家屋全壊1,109棟
● 2011年 東日本大震災…M9.0 家屋全壊118,636棟
● 2016年 熊本地震…M6.5 家屋全壊8,169棟
● 2018年 大阪北部地震…M6.1 家屋全壊3棟
大阪北部地震では全壊家屋は3棟だったものの、被害を受けた住宅は、半壊や一部損壊を含めれば5,000棟にも及んでしまいます。
そして、これらの地震では、数多くの方が被害にあわれました。その悲しい教訓を無駄にしないためにも、私たちにできる対策をしっかり心がけていきたいですね。
地震の度に進化する耐震法
日本の耐震法が最初にできたのは、関東大震災の翌年である1924年です。その後、大地震が起こる度に、建築基準法が制定されたり、耐震基準ができたりと、日本の住宅は強く進化していきました。 特に大きな節目となったのが、1981年6月、それまでの旧耐震基準から新耐震基準に改正されたことです。旧耐震基準は、震度5程度の地震が起きても建物が崩壊しないことを基準に作られました。 ですが、新耐震基準では、震度5程度の地震でも損傷しない事、震度6〜7程度の地震でも崩壊や倒壊をせず、建物内の人の命が守られることを基準にしています。このように、日本の耐震基準は、世界的に見ても高いレベルで進化し続けているのです。
大震災で立証された耐震性の効果
日本の耐震基準の高さを立証するデータがあります。それは、阪神・淡路大震災の時、倒壊した建物の多くが旧耐震基準で建てられた建物であったこと。そして、1981年にできた新耐震基準の建物には、大きな被害は見られなかったというものです。 この結果からもわかるように、日本で住宅を購入する際には、1981年以前か以降かという点が、地震に強い住宅を見極める大きなポイントとなります。
覚えておきたい耐震等級
皆さんは、地震に対する強さを表す「耐震等級」をご存知でしょうか?耐震等級には3段階あります。ここでは、それぞれの等級がどういった地震への強さを表すのかをご紹介しましょう。
耐震等級1
耐震等級1は、数百年に一度発生するかしないかというレベルの地震が起きても、倒壊や崩壊をしない強さとされています。さらに、数十年に一度発生するような震度5程度の地震に対しては、住宅が損傷しない程度が基準になっているのです。 これは、建築基準法の耐震性能を満たしている程度の水準とも言い換えることができるでしょう。ですので、耐震等級1だと、震度6〜7程度の大地震が起きた際には、損傷を受けるなど耐震性には若干の不安が残ります。
耐震等級2
耐震等級2は、耐震等級1で想定されている地震の1.25倍の地震にも耐えられることを基準としています。予想を上回る大地震が頻発している今、最低でも耐震等級2以上はある住宅を選ぶと、安心かもしれません。 耐震等級2は、主に、病院や学校などに採用される耐震等級です。
耐震等級3
耐震等級3は、最も高い等級です。耐震等級1の1.5倍の地震にも耐えられることが基準となっています。 消防署や警察署など、地震の際に稼働していなければならない防災の拠点となる建物には、この耐震等級3が採用されています。地震に強い家を探しているなら、ぜひ耐震等級にも注目してみてください。
地震に強い家・弱い家
ところで、地震という観点から見た時、どのような家が地震に強く、どのような家が弱いのでしょうか?次は、家の特徴と、それぞれの地震への強さを解説していきます。
地震に強いのはこんな家
地震に強い家は、まず第一に家の形が正方形や長方形になっているシンプルな形の家です。四角い家は、建物に生じた揺れの力を、6つの面が一体となって耐えるように働きます。
一方、L字型などの家は、曲がった境目部分にエネルギーが集中してしまうので、損傷しやすくなります。また、建築工法の観点からいうと、木造と鉄筋コンクリート造、鉄骨造はどれが一番地震に強いとは一概にいえません。
地震に強いかどうかのポイントとしては、こちらの点が挙げられます。
● 耐震力が適切な量とバランスで配置されている
● 基礎がしっかりしている
● 結合部分がしっかり接合されている
このようなポイントをしっかりクリアしている住宅は、木造であっても耐震性に優れた建物といえるのです。
地震に弱いのはこんな家
地震に弱い家は、壁の少ない家や、ビルドインガレージのある家、大きな吹き抜けのある家など、広い空間をとっている家といえます。なぜなら、建物は、柱や壁で支える部分が少ないほど、揺れが生じる中心点のバランスは崩れてしまうからです。 家にかかる地震の力のバランスが悪いと、ねじれる力や回転する力など、あらゆる力がバラバラに加わり、家へのダメージが大きくなってしまいます。 また、L字型やコの字型の家、増改築を繰り返した家なども、凸凹になった境界部分に強い力が加わることとなり、ダメージを受けやすいといえるでしょう。心配がある場合には、耐震補強をするなどして、対応するとよいですね。
耐震性に関するQ&A
最後に、耐震性に関する素朴な疑問にお答えしていきます。
うちのマンションは大丈夫?
見極める基準となるのは、1981年以前の建物か、以降の建物かという点です。1981年6月1日以降に確認申請を受けて建築されたマンションには、新耐震基準が採用されています。 新耐震基準のマンションなら、震度6〜7程度の地震でも、倒壊・崩壊しないので、ひとまず安心してよいでしょう。心配な場合は、耐震診断を受けることをおすすめします。
平屋は地震に強いの?
平屋だからといって地震に強いとは一概にいえませんが、2つのメリットがあることは確かでしょう。それは、二階がない分、重さに耐えなくて良い点、そして、シンプルな長方形の形が多いという点です。 最終的には、家の素材や接合部分、体力壁の量や配置バランスなどで判断することとなりますが、2つのメリットがある分、地震に強い家になりやすいとはいえるでしょう。
耐震構造で地震に負けない家を
ここまで耐震性について解説してきましたが、参考になったでしょうか?日本という国に暮らす以上、避けることのできない大地震。 いつ襲ってくるかわからないからこそ、何もない時にどれだけ耐震性について準備をしておけるかが、大切になってくるのではないでしょうか? 耐震構造は、進化しており、昔に比べて地震に強い家も多くなってきました。毎日を安心して暮らすために、地震が起きた後も普通の生活を続けられるように、ぜひ、この機会に耐震構造について理解を深めてみてください。 過去の教訓を無駄にせず、地震に負けない家が1棟でも増えることを祈っています。
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