iemiru コラム vol.418
セットバックする私道や費用ってどうするの? 所有権や固定資産税などよくある質問を解説
土地を探しているときに見かける「セットバック有り」といった表記。よく分からないまま放置している方も多いのではないでしょうか? 実は、不動産屋など仲介業者から簡単に説明されただけで済ませてしまうと、予算オーバーや近隣トラブルの種になることもあるのです。 本記事では、セットバックの内容・条件をはじめ、所有権や固定資産税などについてわかりすく解説。未舗装や花壇、駐車場になど、セットバック前後のよくある質問もQ&Aでまとめました。セットバック有りの土地で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
セットバックとは?
道路を広くするために敷地を後退させること
建築用語の「セットバック」とは、道路を広くするために、敷地を後退させることを意味します。というのも、法律によって家の敷地は幅4m以上の道路に2m以上接すること(接道義務)が定められており、幅が4m未満の道路に接している敷地は後退させて幅4mを確保しなければいけません。 セットバックについては建築基準法第42条2項で規定されていますが、建築基準法が規定された1950年よりも前に整備された道や土地については、基準を満たしていないものが数多く存在します。そんな道や土地については、特例としてそのままの使用が認められており、建物を建て替えるときにセットバックすることが義務付けられています。 専門的にはセットバックする予定の道路は、「2項道路」・「みなし道路」と呼ばれています。
セットバックは消防や日当たり・風通しの観点から法律で決められている
セットバックは火災のときに消防車が通れる道幅にしたり、日当たりや風通しを良くしたりする意味合いから決められました。なかには、自分の土地を後退させて狭くすることに納得いかないという方もいらっしゃいますが、長い目でみれば住民たちの為になる決まりと言えます。 また、住民が協力してセットバックすることで、最適な道路・土地環境が整えられます。環境整備された土地は資産価値も上がりますので、もし土地や建物を売却することになったとき、恩恵を受けられる可能性が高くなります。
セットバックでは門扉やフェンス・塀の設置がNG
セットバックした土地は、消防の観点から消防車が通行できることが求められますので、通行の邪魔になるような門扉・フェンス・塀などの設置は出来ません。道路としての利用が主な目的となりますので、それ以外の利用は基本的にできない決まりです。
セットバックでは所有権ではなく利用権を制限
セットバックした部分は道路としての利用に制限されますが、そのまま手続きをしなければ、所有権は土地の所有者のままになります。つまり、所有権自体は法的な制限を受けず、利用権のみ制限を受けることになるのが特徴です。
セットバックが必要な土地の条件
セットバックの条件① 道路の中心から2m以上
建築基準法で認められる道路は幅4m以上であることが必要なので、幅4m未満の道路は、その中心から2mずつ後退する必要があります。道路の形状が複雑な場合は、単純に中心から2mではなく、接道する住民同士で話し合いをするケースも多いようです。
セットバックの条件② がけ・川から4m以上
道路をはさんで反対側ががけや川の場合は反対側に道を広げられないので、道路の中心から2mではなく、反対側のがけ・川から4m以上後退する必要があります。つまり道幅が3m50cmしかない場合は、50cmセットバックしなければいけません。
セットバックした部分は私有地か寄付・買取してもらうことに
セットバックした部分の土地は、そのまま私有地として所有するか、地方自治体へ寄付または買い取りをしてもらうことになります。地方自治体へ寄付する場合は、役所へ行って権利を譲渡する書類の申請などを行う必要がありますが、基本的には役所が代行して各手続きをしてくれる場合が多いです。 また買い取りについては地方自治体ごとの差が大きく、買い取り自体していないケースやあくまでも寄付として受け取り、助成金「1㎡当たり〇〇万円」といった形で支払われるケースが多いようです。 セットバック後の取り扱いに困っていらっしゃる方は、役所の建築指導課などに相談してみましょう。
セットバックした部分は固定資産税の非課税対象に
セットバックした部分は道路として所有者以外に不特定多数の方々が使うことになるため、所有者としての資産価値はなくなり、固定資産税の非課税対象となる場合が多いです。ただし、非課税の申請をしなければいけませんので、そのまま高い固定資産税を払い続けないよう、早めに役所へ相談しましょう。
ただし、私有地で所有者のみが利用する状況の場合は、非課税にならない可能性もあります。いずれにせよ、早めに役所へ相談してみてください。
セットバック有り物件の建ぺい率を計算する方法
セットバック有りの土地に家を建てる場合は、セットバック部分を抜いた土地に対して建ぺい率を計算することになります。つまりセットバック前の土地面積が50㎡でセットバック部分が5㎡の場合は、有効な土地面積は45㎡です。
セットバックに関するQ&A
Q1. セットバックした土地が未舗装のままだけどどうなるの?
セットバックをした土地を地方自治体へ寄付したにも関わらず、土地が未舗装のまま放置されている場合もあります。地方自治体としては、セットバック部分のためだけに舗装工事するのは割高になるので、水道工事などとセットで工事したいと考えて放置されている可能性が高いです。 そういった場合は役所へ相談するか地方議員へ連絡を取って依頼すると、早めに対応してくれる場合もあるので、困っている方は相談してみてください。
Q.2 セットバックした部分の下に地下室をつくっていいの?
セットバックした部分を私有地として所有している場合、制限を受けるのは道路の利用なので、地下に地下室を設けていいのか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか? 結論としては、地下建物も後退整備の対象となるので、地下室をつくることは違反になる可能性が高いです。
どうしても地下部分を有効活用したいという方は、役所へ相談してみましょう。
Q.3 セットバックした部分が私有地なら花壇や駐車場にしてもいいの?
セットバックした部分を私有地として花壇や駐車場にしている方もなかにはいらっしゃいますが、基本的にはそういった利用方法は認められていません。
セットバックした部分は消防の観点から緊急時に消防車両が通れる環境を確保しなければいけないので、何も置かず開けた状態にするのが基本です。
ですが、もともと私道の場合や公道でも隣家はセットバックしていない場合、損しているような気分になり花壇をつくったり駐車場として利用したりする方もいらっしゃいます。役所としても個別に注意するのは大変なので指導していない場合が多いようですが、良い環境づくりのために自分たちから整備していきましょう。
Q.4 セットバックした部分が私道の場合は誰が整備するの?
地方自治体によって異なりますが、セットバックした部分が私道または私有地として所有したままの場合は、自分で工事を手配しなければ未舗装のままになるケースが多いです。地方自治体によっては工事に対して助成金制度を設けていますので、うまく利用するようにしましょう。
基本的にはセットバック時に工事した方が人件費や材料費の観点から安くなりますので、早めに確認してみてください。土地の購入を検討している方は、カタログに「セットバック有り、私道負担有り」と書かれている場合が多いので確認するようにしましょう。
セットバック物件を検討するときの注意点
狭小地では間取りに影響がある
狭小地では建ぺい率ギリギリで土地いっぱいに家を建てることが多いので、セットバックによって間取りに制限を受ける可能性が高くなります。セットバック部分を明記していない図面上では実現できた間取りでも、実際にはできないこともあるので注意してください。
セットバックすると記録プレートがもらえる
ほとんどの自治体では、セットバックに協力してくれた所有者に対して記録プレートを渡しています。フェンスなどにプレートをつけておくことで、明確にセットバックしていると分かりますので、管理が面倒な方などはつけておくのも良い方法です。
セットバックしても有益な物件(土地)はたくさんある
セットバックが必要な土地だからといって、それだけで建築不可であったり、損したりするわけではありません。むしろ狭小地などでは不動産価値が高騰しやすいので、土地価格が抑えられて得することもあります。 また、セットバック部分を差し引いても充分に価値のある土地がほとんどなので、冷静に土地の条件をみて判断してみてください。
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