iemiru コラム vol.432
導入する家庭が急増中!パティオってどんな設備?
パティオはどこのこと?
中庭や裏庭を表す言葉
「パティオ」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?簡単に説明すると、パティオとは、住宅の壁や柱に囲まれた小庭のようなスペースを指します。集合住宅であれば、入居者だけが利用できる屋外の共有スペースや近所の人々にも開かれた広場のことをパティオと呼ぶ場合もあります。
特にスペイン風を指すことも
もともとはスペイン語で中庭・裏庭を意味するこの言葉。夏場の気温が40度を超えるスペイン南部のアンダルシア地方で、暑さをしのぐ生活の知恵として重宝されてきました。井戸や噴水が設置され、まわりを美しい花々が囲むオープンな庭が典型的なスペイン式のパティオです。通りがかりの人々が涼みながら休憩したり、集まっておしゃべりを楽しんだりする憩いの場として長い間愛されてきました。 日本では、単純に中庭・裏庭をパティオと呼ぶこともあれば、タイルやウッドデッキを活かしたスペイン風のものを指している場合もあります。本記事では、人気急上昇中のパティオの魅力や設置時の注意点についてご紹介します!
パティオが注目される理由
周りから見られないプライベート空間
一般的な庭に比べ、プライバシーが確保されやすい点はパティオの大きなメリットのひとつです。日本におけるパティオの多くは周囲を居住部分が「コの字型」もしくは「ロの字型(回廊型)」で囲むような形で設置されています。 「コの字型」は、住宅部分をコの字型に設計することで、内側にパティオのスペースを作ります。完全にパティオを囲んでしまう形ではないため、ご近所からの視線をさえぎる効果がありながらも、抜け感のある空間になります。また、パティオに隣接する部屋が角部屋になるので、他の間取りに比べ光をとり入れやすくなるのが大きなメリットです。しかし、立地や間取りによっては陽が差しづらくなってしまう可能性もあるため、設計時には建物を建てる向きなどさまざまな条件を考慮する必要があります。 「ロの字型パティオ(回廊型)」は、上から見下ろしたとき、カタカナの「ロ」のように住宅部分がパティオを内包する形で配置されているのが特徴です。ロの字型のパティオでは周囲が壁に囲まれているためプライバシーが確保され、換気する際に通常の外庭よりも安心して窓を開放できるというメリットがあります。また、ロの字型の場合、パティオを中心として家の中をぐるりとまわるような回遊動線が生まれます。この回廊型には行き止まりがないため、家自体をより広く感じさせる効果があります。さらに、パティオを通り抜けられるプランであれば部屋間の移動をショートカットでき、利便性も高くなります。 このように、パティオは住宅街においてプライバシーを守りながらも屋外の開放感を楽しめる空間として、近年注目を集めています。
日常的な癒やし
スペインでは日常のオアシスとして人々に活用されているパティオ。もちろん日本でも、お気に入りの植物を植えたり、誰にも邪魔されない癒しの空間として利用されています。身近に自然があるため、四季の変化を敏感に感じたり、季節ごとの花を楽しんだり、野菜を収穫したりと、暮らしに潤いを与えてくれる点もパティオの大きな魅力です。
風や太陽光をとり込みやすい
住宅の中にパティオを作ることで、家全体に太陽光をとり入れやすくなります。後から隣の土地に新しい住宅が建てられたことで日光が入りづらくなってしまった…という場合に、採光のためリフォームでパティオを設置する家も多いようです。 一般的に暗くなりやすい北側の部屋でも、家の中心にパティオを設けることで南向きの面が生まれ、心地良い自然光が差し込むようになります。また、パティオに植物を植えれば隙間から差し込む光と影がナチュラルなインテリアになり、ムードのある空間を演出する効果も期待できます。 さらに、住宅の中心にパティオを設けることで、室内に心地よい風をとり入れることが可能です。風の通り道が生まれれば家中に空気が流れるようになり、カビや結露の発生を防げるというメリットもあります。
パティオの活用例
プライバシーやセキュリティ、採光面でメリットの多いパティオは実用性が高いだけでなく、毎日に彩りを添えてくれる夢のような空間でもあります。ここからは、憧れの暮らしを叶えるパティオの具体的な活用例をご紹介します!
友人とのパーティースペース
開放的かつ外からの視線が気にならないパティオは、人が集まるパーティーなどにもぴったり。隣家に面した外庭と比べれば、騒音を過剰に気にする必要がないという点も嬉しいポイントです。 雨の多い日本では、屋外のパティオを設けるよりも室内でくつろぐための面積を広くとりたい!という方もいるかもしれません。しかし、パティオに屋根をかけることで天候を気にせず利用できる場所にしてしまえば、どんなシーンでも有効に使えるようになります。植物をライトアップしてお洒落な空間を演出したり、ウッドデッキやタイルを敷いてBBQを楽しんだりと、たくさんの人に自慢したくなるお気に入りのスポットになること間違いなしです。
セカンドリビング
家族みんながくつろげるセカンドリビングとしてもパティオは大活躍。大きなチェアとテーブル、ハンモックなどを置くだけで、最高のリラックススペースになります。 屋内からも目が届きやすいので、安心して子供を遊ばせることのできるプレイグラウンドとしても人気が高まっています。自宅で過ごす時間の多い人や在宅で仕事をしている人なら、パティオで読書をしたりコーヒーを飲んだりするだけで、外出しなくともちょっとした気分転換ができるでしょう。 また、夜にパティオから眺める星空はとても贅沢。ロマンティックな音楽とともに夫婦でワインを飲みながらゆったりとしたひとときを過ごすのはパティオの醍醐味です。家族で共有できるセカンドリビングとして、コミュニケーションの場として、DIYやガーデニング、ティータイムなどさまざまな楽しみ方があります。
隣家とのプライバシー対策
隣家との距離が近い住宅街に暮らしていると、なんとなくお隣さんの視線が気になるもの。そんな場合に、屋外でありながらプライバシーも確保できるパティオはとても便利なスペースになります。あるときは洗濯物の干し場所として、またあるときはプール遊びやBBQを思う存分楽しむ場所として…。パティオの使い方はまさに自由自在。自宅が住宅密集地にあったとしても、誰の目を気にすることもなくのんびりできる貴重なスペースになるでしょう。
二世帯住宅のつなぎ目として
親世帯・子世帯の関係性が重要な二世帯住宅においても、パティオが重要な役割を果たしてくれる場合があります。パティオを中継地として二つの住居を構えることにより、ちょうど良い距離感を保ちながらも、理想的な「スープの冷めない距離」の暮らしを実現させてくれるはずです。 また、子供を祖父母宅へ遊びに行かせるときにも、パティオ経由であれば安心して一人で自由に行き来させることができます。
注意しておきたいパティオのデメリット
家族に嬉しいメリットがたくさんのパティオですが、設置する際には注意しなければならないポイントもあります。ここからは、気になるパティオのデメリットとその対策についてご紹介します!
水害リスクが高い
家で庭を囲うような造りが多いパティオ。だからこそ、水の逃げ道となる排水経路がきちんと考慮されていないと、大雨時に水が溜まりやすいというデメリットがあります。日常的に水たまりができてしまうと湿気が多くなり、カビや虫が発生しやすくなるというトラブルも…。 設計時にはその点に留意し、場合によってはパティオ内に水が溜まらないよう排水設備を設ける必要があります。また、排水設備に土や枯葉などが詰まると故障してしまう可能性があるため、業者に定期的な点検・清掃を依頼し、トラブルを防ぎましょう。
手間・費用が増える
一般的に、住宅は角が増え複雑な形状になるほど材料や補強等の費用もかさみます。そのため、パティオを設ける場合はシンプルな住宅より建築費用が高くなる傾向があります。「せっかくパティオを作るのだからお気に入りの空間にしたい!」と、徹底的に床材やデザインにこだわりたくなってしまうことも、コストが上がる要因のひとつです。 また、新築してから10~15年程経つと、家全体にメンテナンスが必要になります。その際にも外壁の形状が複雑であるほど手がかかるため、構造的に壁面の多いパティオ付き住宅はメンテナンス費用が高額になるケースがあります。 ガラス面の多いパティオであれば窓拭きの作業が増えたり、植栽を手入れしたりという手間もかかります。自分で掃除できる構造か、業者に依頼して手入れしてもらわなければならないのかによっても費用と手間が異なりますので、設計時にはその点もしっかり相談しておく必要があります。
断熱効果が低くなる
一般的に、外気に触れるガラス面からは熱や冷気が逃げやすくなります。そのため、窓の多くなりがちなパティオからは自然と熱や冷気が漏れやすくなり、それに伴い空調費が高くなってしまう可能性は否めません。設置時にはペアガラスやトリプルガラスなど断熱性の高いものを選ぶと、室内の熱や冷気が逃げてしまうのを抑え電気代を節約することができます。ガラス面の位置やデザインによっても断熱性が異なりますので、経験豊富な設計士に相談してみると良いでしょう。
広い土地がないとパティオは実現できない?
「敷地が狭いから、パティオ付きの家なんて夢のまた夢…。」と思う方もいるのではないでしょうか?しかし、敷地が狭いからといってパティオを諦めなければならないということはありません。
通常の庭スペースをパティオへ活用
敷地内でできる限り広く家を建て、内側に庭を持ってくるようなイメージでパティオを配置すれば、比較的面積の小さな敷地でも設置することができる場合があります。特にロの字型(回廊型)であればパティオ用のスペースを確保しやすくなります。 ただし、土地選びの際にはいくつか注意したいポイントがあります。土地の形状や面積、用途地域によって建蔽率や容積率が変わるため、パティオ付き住宅の設計が難しい場合があります。また、エリアによっては道路側の斜線制限などの規制があり思うようなプランが叶えられないケースも…。 「絶対にパティオ付き住宅にしたい!」という希望があれば、事前の敷地選びもとても重要になります。たとえコンパクトなサイズでもパティオを最大限に活用できるよう、空気の循環や陽の差し具合などを考え、効率の良いプランを提案してくれる設計士を探してみましょう。
面積は狭くてもリラックス効果は変わらない!
小さめのパティオであっても、外気に触れられるという点は変わりません。その面積に関わらず、風や光、緑などの自然を身近に感じられることで、十分にリラックス効果を感じられるはずです。 スペインから遠く離れた日本の京都でも、古くから家に中庭を設ける文化がありました。京都の古民家、いわゆる町屋は、家の間口が小さい上に奥行きの長い家が多かったそうです。現代の住宅密集地のように隣家との距離も近かったため、屋内を風が抜けにくく快適とはいえない環境がありました。そこで、風通しを良くするために家の中へ庭を設け、そこに四季折々の植物を植えて季節の移ろいを楽しんでいた、という歴史があります。このような先人の知恵を活かしながら、小さめの土地でもパティオのある暮らしを満喫しましょう!
失敗しないポイント
生活動線の距離
パティオを設置する際に特に重要なポイントが、生活動線を意識することです。パティオは家の中心部に配置されることが多く、その部分を避けて通るような動線になってしまうため、設計によっては遠回りになり、日々の移動を面倒に感じてしまう場合があります。 リビングとキッチン、寝室とトイレなど、それぞれの利用頻度や家族のライフスタイルを考慮し、パティオを通り抜けられるようなプランニングも視野に入れてみると良いかもしれません。
排水機能や窓の大きさ
大雨の後などにパティオへ水が溜まらないよう排水機能を備えておくことも大切です。具体的には、しっかりと排水管を設置する、できるだけ水はけのよい床材を採用するなどの対策に加え、排水管のこまめな掃除も必要になります。 また、窓の大きさも快適な暮らしに大きく影響することを覚えておきましょう。光や風をとり入れるためには、窓のサイズや設置する位置が重要になります。ガラス面が多いと開放感は高まりますが、構造上耐震補強が必要になる可能性もあります。先にも述べたように、熱や冷気が窓を通して逃げてしまうという問題もありますので、ガラス面の面積や数はバランスを考えて配置する必要があります。
パティオ内の設備やデザイン
室内にいながら木や花々、水の流れなどの自然を身近に感じられるのがパティオの大きな魅力のひとつ。しかし、植栽や噴水などを設置する際にはメンテナンスが必須になります。理想的なパティオの状態を維持するためには、メンテナンスの手間がどのくらいかかるかという点もふまえてプランを用意してもらうと良いでしょう。
パティオを上手に取り入れて非日常の癒しをわが家に!
実現可能なリラックス空間
暮らす人やライフスタイルによって十人十色の使い道があるパティオは、まさに小さな楽園。毎日の暮らしを格段に楽しくしてくれる身近なリラックス空間になるはずです。「きちんと良い状態をキープできるかが心配…」という方もいるかもしれませんが、設計や設備、手入れ次第でデメリットはカバーすることが可能です。
設計士の実力が大きく影響することに注意
パティオ付き住宅の設計は、設計士の腕がはっきりと出てしまうといわれています。 ありがちな失敗例として、「間取りが上手に収まっていないせいで廊下が多くなり建物の面積が必要以上に大きくなる」、「パティオがあることで常に家全宅を見渡せるようになり家族間でのプライバシー確保が難しくなる」といったケースがあります。 このように設計プランの配慮が足りないと、パティオのメリットを感じることが難しく、デメリットばかりが気になる家になってしまう場合があります。そのため、信頼のおける設計士を見つけることは理想のパティオ作りに必要不可欠といえます。施工業者の腕も仕上がりに大きく影響するため、パティオの施工・設計を得意とする建築会社にお願いするのがおすすめです。 パティオ付き住宅は構造上避けづらいデメリットもありますが、それを大きく上回るメリットがあるといえます。信頼できる設計士や建築会社に相談しながら、夢のパティオライフを叶えましょう!
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