iemiru コラム vol.433
自宅にもスロープは付けるべき?気になるポイントを徹底解説
「家にスロープは本当に必要?」「簡単につけられるの?」「つけてから後悔することってない?」自宅にスロープを付けたほうがいいのかどうか、こんな悩みを抱えていませんか? 公共施設では馴染みのあるスロープですが、住宅への普及はまだまだ多くありません。そのため、自宅に取り付ける際には疑問や不安がありますよね。 本記事では、自宅に設けるスロープのメリット・デメリット、またスロープの取り付け方、チェックするポイントなどを解説していきます。
自宅にスロープは必要?
ショッピングセンターや駅などで見かけることが多いスロープ。国内の公共施設ではバリアフリー化が進み、段差がどんどん取り除かれています。なぜなら段差があるとその先に進めないまたは段差によって危険を伴う人がいるためです。 それは自宅でも同じことが言えます。加齢により足の筋力が弱っている方、病気やケガで足腰が不自由な方は、階段や玄関の框(かまち)の段差につまずいたり、車椅子では先に進めなかったりと不自由さを感じる場面が少なくありません。
高齢化により必要性が高まっている
高齢化社会を迎えている日本では、スロープをはじめとするバリアフリー設計が当たり前になっています。いろいろな人が利用する公共施設ではもちろんのこと、自宅でもバリアフリー化が必要不可欠になっているのです。 仮に、自宅にちょっとした段差や階段があるせいで、簡単に外出できないとしたら、それほど不自由なことはありませんよね。誰かのサポートがなくては移動ができない状態が続くと、身体だけでなく精神的にも大きなダメージがあります。 高齢化社会に向けて、住まいのバリアフリー化や設備環境を整えることはとても重要なこと。それは親の介護サポートのためだけではなく、将来、自分が高齢となった時に住みやすい家に整えることも意識すべきなのです。
スロープを取り入れた二世帯住宅も
親世帯と子世帯が一緒に暮らす二世帯住宅では、親の介助や介護の可能性を考慮し、バリアフリー設計を取り入れるケースが増えてきています。 バリアフリーであれば、加齢によって足腰が弱っても自分の力で移動がしやすいため、ケガの発生や他者からのサポートを軽減することができます。特に二世帯住宅では「子世帯に迷惑をかけたくない」といった親世帯の要望や「留守中の転倒やトラブルが心配」といった家族の不安も多いことから、導入例が年々増えています。 サポートする側もされる側も気兼ねなくリラックスして暮らせる住宅のために、バリアフリー設計は欠かせない要素と言えるでしょう。
スロープを取り付けるメリット
住宅でいう「スロープ」とは、緩やかな坂になった平坦な通路のことです。階段のような段差はなく傾斜した面にすることで、小さな運動量でも前に進みやすく車輪もスムーズに動かせます。
車椅子での移動が手軽になる
車椅子ではたった1cmの段差でも障害になります。段差をそのまま乗り越えようとすると車椅子のバランスが崩れて転倒する恐れがあります。自力で段差を乗り越える場合は、2cmが限度です。2cm以上の高さがある自宅の階段や玄関先の段差は、車椅子で登ることができないため、他人のサポートが必要になります。 しかし、スロープがあれば段差を気にすることなく1人で簡単に移動が可能です。サポートが必要なくなれば、介護をしている側の負担も軽減されます。 また、移動がスムーズになることで心の変化も期待できます。例えばトイレに行く時、気分転換に庭へ出たい時など「ちょっとした段差で手助けをもらうには気が引ける」といった気持ちの負担も解消でき、精神的にも良いメリットがあると言えます。
外出の機会が増える
「段差を乗り越えるだけで疲れてしまう」「段差があり1人では玄関から出られない」そんな状況になると外出することが面倒になり、どんどん自宅に引きこもるようになる傾向があります。 車椅子を利用していたり、足腰が弱っていると、段差を乗り越える際に体力が必要になるため、外出が億劫になってしまうのです。 しかし、スロープがあれば足腰への負担がほとんどなく、サポートがなくても移動ができるため、外出へのネガティブイメージが軽減されます。「自分の力だけで玄関から出られる」「転倒の心配がない」「足腰に痛みが生じない」という条件が揃うことで、ちょっとした散歩やお買い物にも積極的になれます。
小さい子でも安心して使用できる
足がおぼつかない小さな子どもは、数㎝の段差でも乗り越えられず転倒することがあります。 また玄関の段差は、夜の帰宅時に足元が見えづらく、つまづいてしまったり、急いで外に出ようとして転げ落ちてしまったりと、子どもがケガをしやすい場所でもあります。 しかし、スロープであれば子どもの足でもスムーズに上り下りができます。段差がなければベビーカーのままでも移動が可能です。
スロープがデメリットになってしまう理由
高齢者や小さな子どもにとって大きなメリットのあるスロープですが、一方でデメリットもあります。自宅に取り付ける際には、広い場所が必要だったり、コスト面が問題になります。
取り付けるには十分なスペースが必要
スロープは非常に緩やかな傾斜を描いています。そのため、段差の高低差があればあるほどスロープが長くなります。一般的には10cmの段差を解消しようとすると、スロープの長さは120cmほど必要です。無理にスロープの長さを短縮しようとすると、傾斜が急になり転倒の危険性が高くなります。 また、スロープの端から車椅子の車輪が落ちないように、余裕をもって横幅を設ける必要もあります。 玄関前に十分敷地がある自宅であれば問題ありませんが、そうではない場合はスロープをカーブさせたり、外構や庭を削って設置することになります。
工事費が高くなってしまう
スロープの設置は決して安いものではありません。手すりがなくシンプルなアスファルトを使った短いスロープであれば20万円程度で施工できる場合もありますが、安全性を配慮するなら30万円以上はかかります。 スロープの取り付け工事以外に、階段や塀の解体工事や庭の形状を変更する外構工事も加わるとその分コストが上乗せされます。また、安全な設備にするには、スロープをできるだけ長く設けたり、フットライトや手すりなどの部品も併せて検討する必要があります。 また、住宅のデザインに合わせてスロープの素材をレンガやインターロッキングにすると、さらにコストが高くなります。デザインにこだわると、50万円以上かかることもあります。
階段と選択式になることも
住宅の形状によっては玄関前にスロープを設置できない場合があります。玄関前の敷地が狭くスロープの設置が難しい時は、玄関は階段のままにし、別の場所にスロープを設置します。玄関脇にスロープを設置し、正面は階段のままにする2WAY式にするか、または玄関ではなくウッドデッキや縁側、勝手口にスロープを設ける方法もあります。
スロープを考える際の3つのポイント
自宅にスロープを設置する際に大切なことは、勾配・幅・素材の3つです。勾配とは坂の角度のこと、幅はスロープの横幅のことを指します。素材は、コンクリートにするかタイル敷きにするかといった内容です。 勾配や幅には国で定められた基準があり、バリアフリー法の建築物移動等円滑化誘導基準に則って設計する必要があります。これは、自宅を含む建築物へバリアフリー設計を行う際に「どの程度の角度や長さであれば円滑に移動ができるか」といった指標になっています。これらの基準法の内容も含めて、スロープ設計時のポイントを見てみましょう。
勾配
スロープにおいて最も重視したいポイントは傾斜の角度です。傾斜が高いと車椅子の車輪が重くなり、登ることが難しくなります。せっかくスロープを付けても逆に身体への負担が大きくなる可能性も否めません。 基準法で定められた勾配は、屋内であれば1/12、屋外は1/15とされています。例えば、10cmの段差がある玄関には、その15倍である長さ150cmのスロープが理想とされます。 自走式の車椅子の場合、自力で登れる勾配は1/12までとされ、それより急な1/8勾配は後ろから押してもらうなどしてサポートがなければ、自力で登るには危険とされています。敷地が狭いことが理由で、長いスロープを設けられない時はスロープを折り返して設計したり、手すりの設置が定められています。
幅
スロープ設置の際は幅も重要なポイントです。幅が十分でなければ、車椅子の車輪がはみ出て脱輪する可能性があります。 公共施設でのスロープは人とすれ違える幅が必要であるため、横幅130cm以上と定められていますが、自宅のスロープであれば100cm程度あれば安全とされています。しかし、手すりを設置した際に通れる幅が狭くなることも考えて、余裕を持った設計をすると安心です。
素材
スロープの素材は、住宅や外構のデザインと統一感を出すことも大切にしたいですが、最も考えるべきポイントは「安全性」です。水はけが良く雨の日でも滑りにくいこと、斜面が見やすい色合いや形であることがポイントです。
検討できる舗装材
●アスファルト
●タイル
●インターロッキング
●レンガ
●石 など
このように素材は様々ですが、石材やタイルは滑りやすいためおすすめできません。アスファルトはなめらかに仕上げてしまうと滑りやすくなるため、ざらざらする砂利や砂などの材料を混ぜたり、わざと凹凸のある模様を付けたりして滑り止め加工を施します。さらに、スロープの出口には滑り止め加工を行うと安心です。夜の外出が多い場合は、フットライトを付けておくとより安全性が高まります。
屋内のバリアフリー化も同時に考えよう
スロープの設置と同時に考えたいのが、室内のバリアフリー化です。ドア敷居の段差、浴室内の段差など、何気ないところにも段差は多いものです。また、ドアを開ける時やトイレに座る時なども、足腰が弱っている高齢者にとっては負担が大きいもの。フラットで配慮が行き届いた設計を意識してみましょう。
室内の段差を取り除く
室内の段差はほんの数㎝でも取り除いておきたいところです。よく見られる段差を挙げてみましょう。
●ドア敷居の段差(建具の枠が段差になっている)
●和室とフローリングの敷居
●トイレや浴室の敷居
●玄関の上がり框(かまち)
●勝手口の段差
●バルコニーの段差
●縁側やウッドデッキの段差 など
縁側やバルコニーは使わなければ問題ないのですが、ちょっと庭を眺めたり気分転換に自由に行き来できると理想的です。細やかな配慮があるといいですね。
段差を無くすには、敷居になっている建具を解体したり削ったりします。バルコニーなどの段差には、置くだけのスロープを設置して解消することもできます。ただ、置くだけのスロープはズレやすかったり足を引っ掛けやすかったりもするため、必ず使い勝手をチェックしましょう。
開き戸から引き戸へ
開き戸はドアを開閉する時に体を動かす必要があるため、足腰が弱っていると大きな負担があります。また、車椅子の場合はドアノブに手が届かずに開け閉めすることができません。 開き戸は下にレールがない引き戸にリフォームすると、利便性が増します。車椅子を利用している場合は余裕を持って通り抜けられるように、引き戸の開口幅を十分に確保しましょう。
危ない場所には手すりを配置
階段や廊下には手すりが設置してあることが多いですが、より便利にするには細かい箇所への設置も検討するとよいでしょう。 トイレや浴槽の立ち上がり、玄関の靴を履き替える時、ベッドから起き上がる時など、足腰に力を入れる動作には体への負担が大きくなります。生活動線や家具の配置をチェックしながら、手すりの設置計画を立てることがおすすめです。また、床が滑りやすい部分やよく立ち止まる場所などにも配慮するとよいでしょう。 手すりは後付けしやすく施工にも時間がかからないため、積極的に取り入れていきたいバリアフリー設備です。
スロープ設置にも補助金が使用できる!
スロープをはじめとする自宅のバリアフリー化に伴う費用の一部を、自治体が助成する制度があります。支援制度をうまく活用してすれば金銭的な負担を軽減できます。
介護保険制度の補助金の流れ
介護保険制度とは高齢者住宅改修費用助成制度とも言い、介護が必要な方が住んでいる家で行うバリアフリー化の改修費用の一部を助成してくれるものです。 補助金を受け取るためには、前提として自治体から要介護または要支援といった介護認定を受けている人に限ります。 申請窓口は住まいのある市区町村の役所です。改修を始める前に申請を行います。事前申請をせずに、自宅を改修後に申請をしても補助金は受け取れません。必ず、改修工事を行う前に相談しましょう。
1.介護認定を受ける
介護認定を受けるには病院で意見書を発行してもらう必要があります。自治体の審査には数週間から1ヶ月以上かかります。
2.工事前の事前申請
介護保険証や必要書類を市区町村の窓口へ提出します。
3.リフォーム計画の審査
工事内容の図面や見積書を提出します。
4.着工
審査が通ったら工事を始めます。
5.事後申請
工事が終わったら、事後申請を行います。内容が認められれば給付が決定します。
6.補助金の受け取り
費用の支払方法は全額を施工会社に支払い後、自治体から補助金をもらう方法か、施工会社に1割だけ支払う受領委任払いという方法があります。
対象となる工事
補助金が受け取れるリフォーム工事は主に5種類です。
●手すりの設置
玄関やトイレ、浴槽、廊下などの室内設置の他、門扉やスロープに付ける手すりなど屋外の設置も対象です。
●段差のリフォーム
ドア敷居の段差などを解消するための解体工事や床の貼り替え、玄関などのスロープ設置も適用されます。もちろん、室内に設けるスロープも対象です。
●床材の変更
滑りやすいタイル敷きや劣化した床、凹みのある畳など、転倒の恐れがある床材のリフォーム費用が適用されます。劣化していなくても、車椅子では車輪が転がしにくい畳を硬いフローリングに変更することも可能です。
●引き戸へのリフォーム
車椅子では開けにくい開き戸を引き戸にリフォームする際の費用が適用されます。引き戸ではなく折れ戸やカーテンも対象です。また、操作しやすいドアノブに変更したり、戸の滑りを良くする工事も対象となります。
●洋式便器へのリフォーム
和式便器を洋式便器にリフォームする際の費用の一部を助成してくれます。
上限となる金額
自治体が負担してくれる費用は20万円が上限になっています。工事費用のうち約9割を助成金として受け取れます。例えば工事費用が10万円であった場合、補助金は9万円、自己負担は1万円になります。 スロープを取り付ける場合は、素材や大きさによっても異なりますが約20万~50万円が目安です。手すりやフットライトの必要性も加味しながら、事前相談するとよいでしょう。
スロープを取り付けて暮らしやすい自宅へ
スロープは足腰の負担が少なく車椅子やベビーカーにも安心なバリアフリー設備。人が自由に行き来できる住まいは、スムーズな生活動線だけでなく、気持ちにも余裕が生まれます。
住宅の利便性を向上させる!
スロープがあれば、生活利便性は格段にアップします。ちょっとした外出にもサポートが必要だった高齢者でも負担なく移動ができ、子どもの転倒の危険性も軽減されます。 スロープは高齢者や車椅子を利用している方だけのためでなく、小さな子どもや将来の自分のためにも設置を検討するとよいでしょう。
失敗しないためには具体的な計画を
自宅にスロープを設置する場合は、傾斜の角度や手すりの併用など、設計ポイントがいくつかあります。使いやすいスロープを取り付けるためには、事前計画を念入りに行いましょう。心地良い住まいのためにも、前向きに検討できるといいですね。
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