iemiru コラム vol.447
【連載】一級建築士目線の家づくり vol.3
日本社会では今や、核家族・単身世帯が一般的となっています。
しかし、共働き世帯増加による待機児童問題や東日本大震災などの未曽有の災害の発生に伴って、親・子(孫)世帯が同居(近居)する二世帯住宅の需要も高まってきています。
この二世帯住宅、親と子(孫)といえども別々の世帯が一緒に住むことになります。それぞれの世帯が、不満なく暮らし続けることは簡単ではありません。
この記事では、そんな二世帯住宅に焦点を当てて、「建築家が考える理想の二世帯住宅」について考えてみたいと思います。
これから、二世帯住宅を建てる予定のある方は、是非とも参考にしていただき、皆が幸せを感じられる家づくりを目指してみてください。
二世帯住宅をよく知ろう
まずは、二世帯住宅をよく知ることから始めましょう。
二世帯住宅とは、基本的に親世帯と子世帯の2つの世帯が同じ住宅に住む家として名づけられています。二世帯住宅は、一般的に以下の3種類に分類することが可能です。
完全同居型
イメージとしては、普通の一世帯住宅に夫婦の部屋が加わった感じです。
部屋の構成としては、「リビング、台所、トイレ、浴室、洗面室、個室(子世帯用、親世帯用、孫の子供部屋など)」となります。
完全分離型
完全分離型は、例えば「1階を親世帯、2階を子世帯」など独立した二つの住宅がくっついている感じです。2つのつながりは、扉1枚などで構成されます。
独立した住宅なので、「リビング、台所、トイレ、浴室、洗面室、個室」がそれぞれ二世帯分あるイメージとなります。
部分共用型
このタイプに関しては、様々なパターンを想定できます。例えば、「水回りを共有」・「玄関や居間を共有」など。
それぞれの二世帯のライフスタイルに合わせた形に構成されます。
独立した世帯、でも共同世帯であるという配慮
親世帯・子世帯といえども、配偶者など元は他人の人とも一緒に暮らしていくことになります。ゆえに、うまくやっていくためには、2つの世帯が互いに配慮していくことが大前提となります。
建築というハード面としては、どのような工夫ができるでしょうか。
二世帯住宅だからと言って形にはまったプランを考える必要はまったくありません。個々の家族にあったスタイルにすることが大切なのです。ここでは、いくつかのアイディアをご紹介します。
独立した世帯であるという配慮
キッチンを分ける
キッチンを分ける事には大きな意味があります。
その理由としては、「食生活の違い」ということが挙げられます。特に育ちざかりの孫などがいると、親世帯がその食生活についていくのは大変でしょう。
また、フルタイムで仕事をしている場合、どうしても食事をする時間はバラバラになりがちです。
生活・健康の基盤である「食」について無理に合わせるのは、互いのストレスの原因となってしまいますので、最初からキッチンを分けておくことをおすすめします。
サブリビングをつくる
親世帯と子世帯、年代が違えば、ライフスタイルも大きく異なるでしょう。
就寝時間や起床時間、また見るテレビ番組だって異なるかもしれません。そのような点でお互いが衝突をしないような上手な配慮が必要です。
そこで、「メインリビングと遠くない」かつ「視線が遮られる程度」の位置にサブリビングをつくってみてはいかがでしょうか。
この空間をプライベートスペースにして、お互いが好きな事をできるようにするのも良いと思います。
寝室は1階が親世帯、2階が子世帯にする
親世帯は年齢を重ねており、足腰が弱い方もいます。その様な場合、2階に個室があるのはきついものです。今は元気でも、将来的にはそうなってしまう可能性だってあります。そこで寝室の場所は、1階が親世帯で2階が子世帯という二世帯住宅がおすすめです。
1階と2階にそれぞれの世帯の寝室を分ける事で、程よい距離感を保ち、プライバシーを守ることもできます。
共同世帯であるという配慮
リビングは広めにする
独立した世帯とはいえ、二世帯がせっかく同じ屋根の下に住むのですから共有できる空間も大事にしたいものですよね。
うってつけの場所は、リビングでしょう。
普通の1世帯が住むリビングよりも広い間取りにしましょう。食事の時間や、団らんの時間など各々が同じ空間で、別の事をしていても共有できるくらいの大きさを設定してあげましょう。核家族でのリビングよりも少し大きいくらいの14畳から16畳くらいがおすすめです。
バリアフリー住宅にする
二世帯住宅という事は、「高齢者も一緒に住む」家である事を配慮しなくてはなりません。
核家族の世帯であれば、自身が高齢化する時に合わせてリフォームなどをすることで、バリアフリー化を進めるパターンが多いですが、2世帯住宅ですと、「段差を少なくする」・「玄関を広めにする」・「引き戸にする」など、あらかじめ近い将来を見据えた家づくりの計画も必要になってくるでしょう。
繋がりやすい工夫を
二世帯住宅だからといって、無理に独立した空間を意識しすぎると、必要な時にまで声が行き届かなかったりと、普段の生活のなかでの不便が生じる場合があります。
特別に意識をし過ぎた間取りにする必要はありませんが、例えば「リビングを中心とした形で、各世帯の寝室がある」・「共有の中庭を設ける」などであれば、孤立することなく自然と自分達の部屋と共有スペースを中心として、繋がりを保てる家となるでしょう。
一緒に住んでよかったと思える住宅づくりを
二世帯というと別の家族が住むものだから、どうしてもお互いに気を遣うばかりで、窮屈なイメージを持ってしまいがちです。
だからと言って、せっかく同じ屋根の下に住んでいるのに、まったく別の空間を作りあげてしまうのは、非常にもったいないのではないでしょうか。
親世帯に孫の面倒を見てもらう、子世帯は将来的に介護をするなどお互いが近くにいるからこそできる協力関係を住宅という空間が分断してしまっては意味がありません。
互いのプライバシーやライフスタイルを尊重しつつ、困った時には助け合えるような二世帯住宅を一緒に考え、作り上げていくべきではないでしょうか。
最後に
個人的な見解ですが、建築士である私が二世帯住宅を考える時、「共有できるものは共有しよう」という考え方に立ちます。
現実的な話ですが、年月が経てば、いずれ親世帯との別れもくるものです。そのような時に、また建て替えれば良いというのは今の時代からしてみても合理的ではありません。
「100年住宅」という言葉があるように、長寿命化を目指しているのが今の住宅事情です。
ですので、できるだけコンパクトに組み立てる事が非常に合理的な考え方になります。
当然家族それぞれの考え方があるとは思いますが、合理的な考えに立つと必然的に“完全同居型”の二世帯住宅が望ましいと考えます。
風呂やトイレなどがいくつもあるのは何とも理解しにくいものです。
一緒に住むのだから、それぞれの世帯が互いの住みたいようにとの考え方もあるとは思いますが、いっしょに住むからこそお互いが歩み寄れるところは歩みよるというスタンスが良いのではないかと思います。
現実的なところでは、二世帯から一世帯になるという事を避けては通る事ができません。残る世帯が暮らしやすい家が理想の二世帯でしょう。
vol.4はこちら(準備中)
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