iemiru コラム vol.87
相続を「争族」にしないために 土地の相続5つの注意点
明日は我が身 相続はいきなりやってくる
ワイドショーなどで「遺産相続 骨肉の争い!」などというタイトルをみても、「うちは大した財産ないから大丈夫」とか「まだ親も元気だし、兄弟とも上手くやっているから心配ない」とのんびり構えてしまいがちです。しかし相続争いがこじれ、家庭裁判所で調停に持ち込まれた遺産の金額は、5,000万円以下が75%、1,000万円以下が33%となっています(平成28年 司法統計年報より)。
よほどの山奥でなければ、実家の土地と家屋だけで遺産額が1,000万円以上になることなど珍しくありません。つまり遺産争いはあなたにも降りかかる、身近な大問題なのです。ご両親もいつまでもお元気なわけではありません。今のうちに必要な知識だけでも備えておくことをオススメします。 そこでこの記事では、相続を「争族」にしないために、 ・相続に関わる手続き ・相続登記をしないデメリット ・想像をしないという選択肢 ・相続に関わる税金 ・相続税の負担を減らすポイント という5つの注意点について詳しく解説していきます。備えあれば憂いなしです。ぜひ最後までお付き合いください。
自分たちで処理するにはハードルが高い!?土地相続に必要な書類・費用・手続き
まずは遺産相続の全体の流れを追いながら、相続人が何を話し合わなければいけないのか、書類は何が必要なのかなどを確認していきます。
「争族」スタート!?遺産分割協議
被相続人であるお父さんやお母さんが所有していた不動産の登録名義を変えるために、まず「誰が」「どれくらい」相続するのかを、相続人全員で話し合います。これを「遺産分割協議」といいます。 「分割」とありますが、必ず土地や建物を分けなければならないわけではなく、例えば長男の単独所有に決めて、他の相続人全員が賛成すれば問題ありません。 ただ、相続人同士の思惑がぶつかり、揉めるのがこの遺産分割協議です。 実際には何かしらの形で分割するのが通常ですから、次に土地の分割の仕方を解説します。
相続した土地の分割の仕方
・現物分割・・・遺産をそのままの状態で分割する方法です。例えば土地と建物は長男、株や債券は次男、現金は長女といったように、現物をそのまま相続人で分け合います。 不動産の評価額と株債権、現金が同額ずつあれば問題ないのですが、そのようなことは通常ありませんから、「不公平だ」と不満がでて、争いの原因になります。 ・代償分割・・・代償分割とは、ある相続人が土地や建物などの遺産をすべて相続します。そしてその代償として他の相続人に相続分相当額の金銭を支払い分割とするというものです。 土地や建物といった分割しにくい財産でも分割が可能といったメリットもありますが、金銭を支払う側の相続人に相応の資金力が必要となります。 ・換価分割・・・遺産をすべて売却し、現金に換えた上で分割する方法です。 売却処分する時に譲渡取得税がかかってしまいます。また処分する手数料も必要です。 ・共有(分割)・・・分割相続を先送りし、「みんなの持ち物」=共有財産にしておく方法です。 次に述べるように、「争族」の原因になりやすいのがこの共有です。
共有は後の争族を生む
とりあえずは争いにならない共有ですが、問題を先送りにしているだけとも言えます。 将来財産を処分しようと考えても、共有している相続人全員の同意がなければ処分できません。更に相続人の結婚・出産、死亡などにより、問題がどんどん複雑になっていきます。 「あの時きちんと決めておけば良かった」と後悔しないように、他の分割方法で処理することをおすすめします。
相続登記に必要な書類・費用を準備する
●相続登記に必要な書類 遺産分割協議書・・・遺産分割協議が終わり、誰がどの財産を相続するかが決まったら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名、実印で捺印します。 その他必要な書類は以下のとおりです。 ・土地の相続登記の申請書類 ・相続登記する不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) ・被相続人(亡くなった人)の住民票の除票(本籍記載のあるもの) ・被相続人の出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本や除籍謄本、戸籍謄本がコンピュータ化される前の改製原戸籍謄本 ・相続人全員の戸籍謄本 ・相続人全員の印鑑証明書 ・相続登記する不動産を取得する相続人の住民票 ・相続登記する不動産の固定資産評価証明書(登録免許税計算のため) このように大量の書類が必要となり、特に被相続人の連続した戸籍謄本や除籍謄本の取得は、かなりの時間と手間が必要です。 また遺産分割協議書の作成は書き損じなどのミスがあると法務局に無効とされ、再度の話し合いと協議書の作成という二重の手間がかかってしまいます。 そのため費用はかかりますが、プロである司法書士に一任するのも一つの方法です。 ●相続登記にかかる費用 ・法務局に収める登録免許税:固定資産税評価額の合計×0.4% ・登記事項証明書:不動産1個につき600円 ・戸籍謄本関係の発行手数料:3,000~5,000円 ・郵便代金 ・(司法書士を頼む場合)司法書士費用(5~6万円程度)
書類を法務局へ提出
相続登記の必要書類が全て揃ったら、費用を用意して相続不動産の管轄の法務局に提出します。 法務局に書類を提出して10日~2週間ほどで新しい土地の権利書が発行されます。これで相続登記が完了したことになります。
相続登記をしないデメリット
相続税の申告と違い、相続登記にはいつまでにしなければいけないという期限はありません。また相続登記をするためには遺産分割協議をしなければなりませんし、費用もかかります。 そのため「そのうち登記すればいいか」などと考え、そのままの状態で放置しているケースも多く見られます。 しかし、相続登記はぜひ早めに完了しておくことをおすすめします。なぜなら後になればなるほど様々なデメリットが発生するからです。
相続人の結婚、死亡などで相続人が変わってしまう事がある
相続人が亡くなればその子供が相続人となり、またその子供が亡くなれば更に子供が相続人になります。 そのため初めに被相続人が亡くなった時は3人だった相続人が、結婚出産、代替わりなどを経て、十数人に膨れ上がるといったことも珍しくありません。 こうなると、いざ遺産分割協議を始めようとしても全員の意思確認をするだけでも一苦労です。その上意見をまとめて全員の実印を捺印するというのは大変な手間がかかってしまいます。
時間が経つと、それまでの合意が覆ることも
一番多いパターンは、被相続人が亡くなった頃にはある程度合意に達していたのに、「気が変わった」といって遺産分割協議に応じない人が出てくることです。 まさに「争族」となり、家庭裁判所に調停を申し出なければ解決できない場合も出てきます。
対象不動産の売却や担保提供などができない
相続の対象不動産を売却したり、お金を借りるために抵当権を設定し、担保に入れたりするような場合は、相続登記が完了していないと実行できません。 急にお金が必要になって相続登記をしようと考えても、上記のような理由で争族になっていては売却や担保提供はできません。
土地を相続すると様々な税金がかかる
土地を相続すると、相続税をはじめ様々な税負担が発生します。メインとなる相続税は、相続人全員が相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納税しなくてはなりません。ここではその相続税の計算方法と相続税を減額する特例、その他の税金などの解説をしていきます。
相続税の計算方法
相続税は相続したものすべてにかかってきますが、ここではシンプルに不動産のみということで考えてみます。 ●不動産の価格算出方法 土地の価格は路線価格のうち、相続税評価額という時価を用います。相続税評価額が60万円で、土地の広さが50坪であれば、3,000万円となります。 建物の方は固定資産税評価額を用います。今回は2,000万円で考えてみます。 ●不動産の価格から基礎控除額を引くことができる 遺産の総額(今回は不動産の金額5,000万円)から税法上認められている基礎控除額を差し引くことができます。 基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人数) お父さんが亡くなって、奥さんの子供2人が相続人になった場合は、 3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円が基礎控除額となります。 5,000万円-4,800万円=200万円 この200万円に対し税金がかかってくるわけです。 1,000万円以下の税率は10%なので、相続税は20万円ということになります。
土地の相続税を引き下げる!小規模宅地等の特例
実は亡くなった方が住居として使用していた土地に関しては、評価額が80%OFFになるという特例があります。 それが「小規模住宅地等の特例」です。これは、 1 宅地面積が100坪以下(小規模)であること 2 相続する人が配偶者か同居の親族、または別居していても3年間賃貸住宅に住むなど持ち家をもっていないこと これらの条件にあてはまれば80%OFFの恩恵を受けられます。 先程の例でいうと、奥さんが相続すれば、土地の価格3,000万円が600万円と評価されます。 (土地600万円+建物2,000万円)-基礎控除4,800万円=-2,200万円 とマイナスになりますから、相続税はかかりません。 たとえ100坪を超える大邸宅に住んでいても、100坪分までは80%OFFされ、残りが通常通り計算されるので、多くの人に恩恵のある特例です。
相続税以外の税金一覧
・登記や登録手続き等をする際にかかる登録免許税:固定資産税評価額の合計×0.4% ・相続した翌年からは固定資産税 ・売却した場合は譲渡所得となり、所得税がかかる ・不動産を賃貸していた場合は、不動産所得税がかかる ・相続人以外は不動産取得税がかかる
相続をしないという手段もある
「争族」などに巻き込まれるのは嫌だ!と考え、相続をしないという選択肢もあります。
相続放棄
相続放棄とは「一切の遺産相続をせず、すべてを放棄してしまうこと」です。 実は遺産には現金や債権、不動産などの「正の遺産」だけではなく、借金などの「負の遺産」も含まれています。 そのため借金などを引き継ぐのが嫌だ、遺産相続争いに巻き込まれるのが嫌だという場合には、相続を放棄するという手段が使えます。 手続きとしては、相続があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てをします。 この時、遺産を相続するときのように相続人同士で協議する必要はありません。単独で申し立てをすることも可能です。 ただ気をつけていただきたいのは、「一度申し立て受理された相続放棄は二度と取り消しできない」ということです。 後から資産があることがわかり、やはり相続したいと思っても、取り消すことはできません。 そのため事前にしっかりとした資産調査をしておく必要があります。
備えあれば憂いなし 生前贈与
死んだ後の「争族」を防ぐために、生前贈与を利用するという手があります。これは文字通り、生きているうちに財産を贈与するというもの。 遺言を残していない場合はもちろん、遺言を残していても、土地の場合は分割が難しく、遺産相続争いに発展しやすい傾向があります。 生前に自分の意志で希望する相手に贈与しておけば、この争いを未然に防ぐことが可能です。 また相続税を上手に圧縮できる場合もあります。
おしどり贈与
婚姻期間が20年以上の同居の夫婦間では、自宅の土地を贈与する場合、通常の贈与税の控除(年間110万円)の他に、2,000万円まで配偶者控除が受けられます。一般的におしどり贈与と呼ばれるものです。 このおしどり贈与を利用することで、相続税の負担を減らすことが可能です。
相続時精算課税制度
60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子供、または孫に贈与する場合、2,500万円までは一時的に無税で贈与できます。それが相続時精算課税制度です。 もちろんずっと無税ということではなく、相続の時の相続財産に含まれ、相続税として精算しなくてはなりません。 それでも土地のように分割が難しいものを予め贈与しておくことで、遺産相続争いを未然に防ぐことができます。
遺留分に注意
遺留分とは法定相続人に対し、「最低限これくらいは残してあげなさい」と法律で決められている金額(相続割合)です(民法1028条)。 例えば生前贈与で一人の法定相続人に集中して贈与した場合、被相続人の死後、「遺留分減殺請求」として他の法定相続人から訴えられる場合があります。 極端なエコヒイキは許さないという法律の配慮ですが、せっかく生前贈与を行っても、これが原因で遺産相続争いに発展してしまうので注意が必要です。
土地の相続を争族にしないために
土地の相続は資産額が大きいこと、また分割が難しいことから、相続争いに発展しやすい傾向にあります。 争族を避けるポイントは 1 共有はやめる 2 遺言を残す、生前贈与を活用するなど事前に準備をしておく という点です。 相続はいつ自分が当事者になるか分かりません。日頃から相続人になりそうな親族とはコミュニケーションを取り、事前準備をしっかりしてスムースな相続を目指しましょう。
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